――佐助さんに連れられてやってきた幼稚舎。

その奥では慶次さんが幼子の女の子に何か説教をされている場面が展開されていた。

その隣ですやすやと1人の半裸の男の子は寝こけている。

不思議な場面に私と佐助さんは顔を見合わせた。


「だいたい、けいじはいつもとつぜんすぎるのです!きゅうにかがにもどってきたのかとおもえば、おだをうらぎれなどとわけのわからぬことをいいだす…いぬちよさまもたいへんこまっていました。じじょうをしっかりはなしさえすれば、あのおなごをきずつけずにすんだのですよ!」

「悪かったって、まつ姉ちゃん!だから、そんな小さい身体で説教しないでくれよ!何だか自分が情けなく思えてくるっつーか……。」

「…風来坊が情けないのはいつものことじゃないの?」

「って忍びの兄さん!?いつからここに……。」


 いきなり佐助さんが乱入して驚いた慶次さんは襖の方を見た。

観念して私も部屋の中に入る。

慶次さんは「情けねぇ……。」と呟いてがっくりと項垂れた。

そんな慶次さんの様子も構わずに、佐助さんは幼子の女の子(多分まつさん?)に話しかけた。


「名前ちゃんが目覚めたから、アンタ達元に戻れるけど…その後、アンタ達はどうすんの?悪いけど、今じゃ加賀は武田の支配下にある。アンタ達が織田に戻るようなら、俺様はアンタ達を始末しなきゃなんないんだけど。」

「もういぬちよさまもこのまつめもこころはきまっておりまする。けいじからはなしはききました。たけだとどうめいをむすび、いくさのないよをめざす…それこそがこのまえだのいえのあゆむみちだとこのまつはおもうのです。」

「…じゃあ前田さんの家も仲間入りですね。良かった!」

「…どうでもいいけど、国主そっちのけで話が進んでるみたいだけど、大丈夫?」


 困ったような表情を浮かべていた佐助さんの問いかけにまつさんは笑顔で「よいのでございまする!」と言い切った。

…何か慶次さんが育ってきた環境が分かった気がする。

かかあ天下なんだな、この家は。



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