13


――私が意識を取り戻した時、既に甲斐に戻っていたらしくいつも寝起きしている部屋に私は寝かされていた。

そのすぐ傍には佐助さんがいて、目覚めた途端に私を抱きしめてきた。

…なんだか大袈裟だな。

そう私は感じると、佐助さんを剥がすことから始めた。


「…大袈裟ですよ、佐助さん。少し眠ってしまっただけなんですから。それより甲斐に戻ったんですね。凄く早いじゃないですか。」

「何言ってんの、名前ちゃん!?もう3日も眠ってたんだよ。傷もたいしたことないのに、そんなに眠るなんてどこか具合が悪いんじゃないの?」


…3日。

私の時間感覚が狂っていたことにかなり驚いたものの、あの後の経緯を知りたくて、その話について今は置いておくことにした。


「…それより前田さん達は?私…もしかして失敗しちゃったんですか?」

「はぁ…全く自分のことは二の次ってわけ?…そんな心配しなくても成功したよ。今や加賀の前田は武田の支配下になった。今じゃ、名前ちゃんが気を失っていたものだから、あっちの幼稚舎の方で風来坊が2人を説得してるとこ。」


…良かった。

上手くいったんだ。

ほっとした表情を浮かべていると、佐助さんが私を睨みつけた。

…気のせいか、呆れたような雰囲気も感じられる。

驚いて身を竦ませると、佐助さんは私の両肩を掴み、揺さぶり始めた。


「なに安心したような表情浮かべてんの!?アンタの長い間眠っていた理由とかはまだ解決してないでしょうが!」

「…頼むから揺さぶらないでください!?色んなものが込み上げてくるというか……うっぷ…マジ吐きそう。」


 起きた途端、中々ハードな苦行を強いられるなと思いつつ、身体を落ち着かせていると、天井裏から小太郎君が振ってきた。

…本当なら驚くところなのだが、正直そんな余裕はなかった。

私が起き上がっていることに気付いた小太郎君は半紙を片手に話しかけてきた。


「……。(もう身体の方は大丈夫なのか?)」

「あ、大丈夫です。全然、傷の方も痛みもあまりないですし、あとはちょっとずつリハビリというか…うん、運動すれば何とかいけますよ。」

「……。(そうか、それなら良かった。ところで何かあったのか?)」

「…そうだよ、名前ちゃん。眠っている時のアンタは…なんか魘されているように見えた。…もしかしてアンタの力が何か影響してんの?」

「…あ、そうだ。私、教えて欲しいことがあるんです。「婆娑羅」って何ですか?」



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