――朦朧とした意識の中、私は1人の男と出会った。

…ここに来る前の綺麗な景色の中で出会った変わった人。

面影が誰かに似ているような気がして、思わず私は彼に呼び掛けるように名前を呼んでしまった。


「…さ…すけ…さん……?」


 私の言葉に呼応するかのように私の方に彼は近づいてきた。

彼は私の手を取ると、何か光るものを私の手に託した。

けれど、何かを確認する間もなく、私の手からソレは消える。


「…やっぱり面白いな、アンタは。アンタに力を託して正解だったよ。もうちっと早く殺されてここに戻ってくると思ってたけど、案外やるもんだね。」


――彼の言葉に私はふと疑問が過る。

…私も殺されることがあるのかな。

てっきりこの力のおかげで危害を加えられることはないと思っていたんだけど。

そういう私の考えを読み取ったのか、彼は愉快そうに笑った。

その笑みは何となく不快感を覚える。


「おいおい、勘違いするなよ。アンタに預けたその力は万能じゃねぇんだ。相手に人を殺させねぇよう仕向けることはできるが、その過程でアンタが殺されることもあり得る話なんだぜ。」


…この世界でも死ぬことはあるのか。

変に彼の話を聞いた途端、私は冷静になってしまった。

それなら……そもそも私のこの世界での存在は一体、何なのだろうか。

人間…の括りに入っているんだろうか。

そんな私の疑問にもやけに饒舌な彼は応えてくれる。


「アンタは人間…というより化け物に近いかもな。…でも、心配しなくともアンタだけじゃねぇよ。…婆娑羅もんは皆化け物だ。特に闇の婆娑羅をもつもんは。アンタの成果が俺の予想以上だったから教えてやるよ。アンタは闇の婆娑羅者として今の世界に生まれ落ちたんだ。アンタは人間でもあり…妙な力を操る化け物でもある。…不死身でも何でもねぇよ。婆娑羅の力を失えば、アンタの力も失う。それだけのことさ。」





――第十二話 「かがのばかっぷるにあいました」



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