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――躑躅ヶ崎館に着くと、私達ごと幸村さんと御館様のいるところに通された。
この間の話を御館様が慶次さんに話し終えると、慶次さんは任せておけという風に胸を叩いた。
「面白いことを考えるじゃないかい。かすがちゃんから話は聞いていたんだけどよ、興味があってここまで来たんだ。俺もその案に乗った!元親のことも話を通してやるよ。ただ…利とまつ姉ちゃんのことは正直どうなるか分かんねぇよ?一応、説得はしてみるけどよ…織田を裏切るのは難しそうだからな。」
「…ならば、その際は名前を寄越すのはどうじゃ?名前の力で加賀の前田を下したことにして一時的に武田の支配下になれば、織田側も前田については何も言わんじゃろう。…現に北条については織田側から動きはないしのう。」
「…名前ちゃんの不可思議な力に警戒してるだけなのかもしれませんけどねぇ。あの織田が動かないなんて何か策あってのことに決まってるでしょ。」
「佐助の言う事も一理あるが、好機には相違ないであろう。この隙に乗じて同盟を結び、織田を滅する力を育むとよい。」
「さっすが御館様にございまするな!この幸村、織田の滅亡を果たしてみせまする!」
…相変わらず幸村さんがフルスロットルで煩い。
傍で見ていて顔を引き攣らせていると、御館様が立ち上がった。
…慶次さんが来たことで少し用があるらしい。
同行しようとする幸村さんを制し、御館様は豪快に笑った。
「今宵は若者同士で楽しむとよい。風来坊の持ってきた越後の酒があるというしのう。ワシも参加したいところじゃが、やらねばならぬことがある故、先に失礼する。後を頼んだぞ、幸村よ。」
「御館様!立派に御役目を果たしてみせまする!!」
「はいはい、旦那。もうちょっと静かにできないもんかね、全く。」