城下町に着いたけれど、未だに手を離してくれない佐助さん。

握っていた手を離そうと試みるも、佐助さんは尚のこと握りしめる。


「…いい加減手を離してくれませんかね。少し色んなところ見てみたいんですけど。」

「本当お馬鹿さんだね…手を離したら迷子になるか、攫われるかのどっちかでしょうが。行きたいところなら俺様に言いなさい。連れて行ってあげるから。」

「あー…じゃあ着物とか売ってるところ見てみたいです。あと簪も。」

「了解。ご案内差し上げますよ、お姫様。」


 佐助さんがふざけてそう言うものだから、私は思わず笑ってしまった。

言ってしまった佐助さんも可笑しかったのか、楽しそうに笑った。

佐助さんに手を引かれてやって来たのはまさに女の子達の好きそうな小物ばかり売っているお店だった。

その中で橙色の綺麗な簪を見つけて思わず手に取った。

陽の光に透かすと琥珀のように透き通る。

…綺麗だなと柄にもなく、女の子らしいことを思っていると佐助さんに取られ、あっという間に会計を済まされた。

…あれ、結構高そうだったような。

そこまで考えつくと、佐助さんに言った。


「あの、その簪なんですけど…高かったんじゃないですか?」

「ああ、これ?そんなことないよ。名前ちゃん、あんまり女子らしいもん持ってなかっただろ。ほら、この小袖にちょうど合うし。」

「お嬢ちゃん、兄ちゃんの言葉に甘えときな。いいね、2人で逢引かい?」

「アハー…ま、そんなとこ。名前ちゃん、行くよ。」


 お店のおじさんに適当に返事を返すと、佐助さんは再び私の手を取って歩き出す。

…「あいびき」?正直、「合挽肉」しか出てこなかった私の女子力に絶望する。

佐助さんに手を引かれながら1人で考えたものの、適当な言葉が思いつくことが出来なかったので諦めて佐助さんに聞いてみた。


「…えっと、「あいびき」って何ですか?」

「…知らないの?はぁ…名前ちゃんって旦那ほどじゃないけど、こういうの疎いんだね。俺様、苦労しちまいそう。」


 私の問いかけに呆れたような声を出す佐助さんに私はイラッとしながらも、ここで喧嘩したら教えてもらえなさそうなのでグッと堪えた。

先を促す私の視線を受けて、佐助さんは頬を掻きながら言いづらそうに呟いた。


「…逢引ってのはこういう風に男女が出かけることを言うの。名前ちゃんの世界にもなかった?こういうの。」

「あー、デートって奴ですか。恋人同士のお出かけみたいなもんでしょ。」

「そうそう。」

「そうそう…ってえ?」


…今、誰と誰がデートしたって言った?

それ以上説明したくなかったのか、佐助さんは手を引っ張って先を急ぐ。

少し速足だったので私もそれに合わせて速足となってしまい、それ以上さっきのことについて考えることはなかった。



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