May 1
「かすが…私、温泉に行きたいです!」
かすがに懇願するように言ったのだが、その返答はかすがではなくて、別の人物によってされることとなった。
「いいねぇ、温泉。旦那も誘って4人で行こうか。いつにする?」
無理やり話に割って入ったのは満面の笑みを浮かべた佐助君だった。
勝手に話を進めて、部活のスケジュールまで確認している。
…いつの間にか日程も決めたようだ。
私が何か言おうとする前に、かすがが眉を顰めた。
「猿飛、私達はお前を誘った覚えはない。それ以前に温泉に行くって提案も迷っているところだ。」
「かすが、名前ちゃんと行きたくないの?」
「…行きたいに決まっているだろう!行きたくないのはお前との方だ!」
「ひっでー!名前ちゃんはそんなこと言わないもんね。」
佐助君はそう言いながら、私に後ろから抱き付く。
…なんか凄く馴れ馴れしい感じもするけど、チャラい彼のことだからこんなの日常茶飯事なんだろう。
特に気にしないようなふりをしてみる。
私だけ意識していると思われるのも嫌だし。
「名前、私は温泉でいいと思うのだが、日程はどうする?私は新体操部の部活のない日がこの日とこの日の2日間なんだが。」
「うん、そこでいいと思う。ちょうど塾も休みだし。佐助君もそれでいい?」
「え、俺も誘ってくれんの?」
「あ、別に行かないんだったら、いいよ。」
「いや、行きます、行かせてください。この日程だったら大丈夫そうだし、旦那に話してみるよ、うん。」
私に誘われたのが意外だったのか、佐助君は一瞬、唖然とした表情をしながらも、予定の調節を始める。
仮にも友達になったのだから、仲間外れは可哀想だもん。
それに温泉だし、結局いつも一緒というわけではないし…という理由で佐助君を誘ってみたのだけれど、かすがは驚愕の表情を浮かべたまま固まっている。
…そんなに驚くことかなぁ。
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