番外編〜もしももう一度井戸に落ちたのなら3〜
――やがて夕餉という名の大宴会が始まった。
あんな短時間でこんなに作れるものかというくらいの量の料理を肴に酒を飲む人達がいた。
…こんなに人がいっぱいいたなんて吃驚だ。
本丸にいた色々な人(刀?)と話をしつつも、最後は佐助さんの待っていたテーブルの方に戻る。
そこには先程体調を崩していた主さんも戻ってきていた。
「あの…大丈夫ですか?身体の方は?」
「ありがとうございます。少し寝たら治りましたから。」
「あ、念のため薬でも飲んでみる?忍び直伝のもんがあるんだけど……。」
「…佐助さんの薬は飲まない方がいいと思います。」
…だってとてつもなく苦いし。
至極真面目な顔でそうアドバイスすると、主さんは丁重に断りの返事を入れていた。
じと目で佐助さんに見られる。
…忍びの人しかあの薬は飲めませんよ。(経験者談)
しばらく主さんの近くで食事をとっていると、給仕が粗方終わったのか燭台切さんが近づいてきた。
一瞬、何故か主さんの表情が強張る。
そんな主さんを燭台切さんは心配そうに窺いみてから言った。
「まったく…大丈夫なのかい?ここのところしっかり寝ていなかっただろう。」
「あー…心配おかけしました。大丈夫ですから。今日は念のため早く床につきますし。」
「はぁ…君の大丈夫は信用ならないというか。じゃあ僕が部屋まで送るよ。」
「え、いや、ちょっと待っ…!」
燭台切さんはひょいと軽々と主さんを持ち上げると、大広間から出て行った。
…っていうかあの人、持ち上げられること多いな。
ぼーっとその様子を見ていると、肩を叩かれる。
ふと振り向くとそこには白い鶴丸さんがいた。
「よっ!驚いたか?あの2人は実は恋仲なんだぜ。」
「へぇ…そうなんですか。道理で雰囲気が柔らかいんですね。」
「名前ちゃんもやってもらいたい?」
「いや、いいです。というか楽しそうですね、鶴丸さん。」
「ああ、何て言ったって祝いたい事柄がもう1つ増えたからな。」
「…ということは燭台切殿がついに本懐を遂げられたのですか?…弟たちが喜びますな。」
「フッ…そういうことならば、今夜のところは文句は言わん。主のためだからな。俺にとっても永劫主の下に仕えられる…悪くない話だ。」
「長谷部の旦那、アンタはもうちょっとこれを機に主から離れるべきだと思うぜ。」
鶴丸さんの一言を皮切りに次々とお祝いムードが漂う。
…一体、何なのか聞こうとするも、いつの間にかいた青い瞳に三日月を浮かべた人から「人の身では分からぬ些末事よ。」と誤魔化され、結局教えてもらえなかった。
to be continued…