番外編〜もしももう一度井戸に落ちたのなら2〜
――しばらく団欒していると、とりあえず一つの解決策に思い当たった。
あちら側に帰る方法として使ったことのあるこの方法。
一回試しただけあって信憑性抜群のこの方法は採用され、試してみることになったが夜も遅くなるということで今夜はこちらの世界に泊まることになった。
夕飯の支度をすると言って立ち上がったのは燭台切さん。
……これか、さっきの違和感は。
オカン力か。オカン属性だったんだ、この人も。
合点がいったように頷いた私を不思議そうに佐助さんは眺めると、既に黒いまるでお洒落なカフェのウエイターさんが着ているようなエプロンを身に纏った燭台切さんに声をかけた。
「悪いけど、燭台切の旦那。俺様も立ち会ってもいい?忍をしていたもんで、慣れないところでの食事は慣れていないんでね。」
「別に構わないよ。君達の住む戦国の世じゃ、その行為は当然だろうしね。伊達にも忍びはいたし、刀だった頃によく見かけていたもんだ。」
「…なんかこの人達が刀だって慣れませんよね、えっと…主さん?」
「あ、ええ。すみません、真名は明かせなくて。私も審神者を始めた頃は慣れなかったから、それは当然だと思うわ。それより佐助さん、厨にいる間、彼女はこちらにいてもらえばいいですか?」
「そうだね。あ、心配しなくても名前ちゃんの警護は俺様がやるから。」
「でも厨の方に行かれるんじゃ……。」
主さんがそう言いかけた時、佐助さんはいつものように分身を作り、その分身を私の元につけた。
その様子を目の当たりにした主さん達はあんぐりとしたままこちらを向いている。
「こういうこと。あのゲーム持ってんだったら、こういう事できるってことは知ってるんじゃないの?じゃ、燭台切の旦那。厨の方に案内してくんない?これでも料理は幾分かはできる方でね。」
「あ、ああ…手伝ってくれると助かるよ。ところで……今の君は本物の君なのかい?」
「燭台切さん、そういうのは気にしなくても大丈夫です。どっちも佐助さんは佐助さんなので。多分、本物の方があなたの方に行くと思うんですけど。」
「さっすが、名前ちゃん。ご名答。料理が出来上がるまでここで待っていてくれる?」
佐助さんはそう軽い調子で応えると、燭台切さんの案内の下、厨の方へ向かっていった。