St Valentine's Day in the video game
…うわー…最悪の台詞チョイスだ。
告白画面で止めていたロードを再生してしまったらしく、氷室先生の照れながらの告白が流れる。
「…名前ちゃんがそんなことするとは思わなかったねぇ。名前ちゃん、俺様を裏切った代償は重いよ?」
…ここまでテラコヤスボイスが威力を発揮するのは未だかつてないだろう。
後ろのテレビ画面での甘いコヤスボイスにこっちの冷たいコヤスボイス…どっちも美味しいですっていうのは頭の端に過っただけのもので、本音は一生懸命目の前のBAD ENDを避けようと考えるので精一杯だ。
誤って監禁ENDや死亡ENDを迎えたとしても、ゲームではリセットすればその難から逃れることが出来るが、今の場合はリセットできない。
…とりあえず本体ごと電源を落とし、なかったことにした。(ゲームの方を)
「ほら、現実の恋人は佐助さんだけですよ。」
「アハー…そんな子供騙しで俺様を騙せると思ってんの?」
「…ですよね。」
――やっぱり騙せなかったか。
ちょっとは引っかかってくれるかなと思ったんだけど。
…仕方ない、奥の手だ。
佐助さんの腰に腕を回し、抱きしめてみる。
そして出来るだけ甘えた態度で呟いてみた。
…これで何とかならなかったら諦めるしかないかも。
「こうやって抱きしめられるのも佐助さんだからですよ。」
「っ……名前ちゃん……!…いいよ、今回だけは騙されてあげる。その代り付き合ってもらってもいい?ちょうど明日も名前ちゃんはお休みとってるみたいだしねぇ。手加減なしでも大丈夫でしょ。」
「……承知いたしました。」
…この展開は「奥の手」を使った時点で予想していた。
一生の束縛と一夜の束縛…どちらを選ぶかといったら後者だ。
私は佐助さんの言うことに素直に頷いたのだった――
END
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バレンタインデーに何も書かなかったための懺悔話でした。
作中に出てくる乙女ゲームは勿論アレです。
佐助とは全くタイプの違う彼ですが、名前さんを間違いなくテレビの中でも翻弄していることでしょう。
節分話と同じオチなのは仕方ない。