戦国無双短編 | ナノ ×third
「白紙の手紙に、何か感じなかったか?」
「…は?」
訳がわからないといった様子で紅蓮は眉を寄せる。
だが、ややあって何かを思い出したかのように呟いた。
「佐吉」
「――っ!?」
その名前に三成は反応した。
「佐吉って名前が、出て来た」
「…ふっ。そして?」
「佐吉は、…………」
『これ、何?』
『指輪というものだ』
『指輪?』
『……婚約の証だと、南蛮ではそういう意味だと』
『…ありがとう、佐吉』
『…手紙、見たか?』
『見たけど、真っ白だよ?』
『…お前にだけ、真っ白な手紙を送る。その度、俺を想え』
『……喜んで良いの?』
『どういう意味だ』
「佐吉…?」
「ああ」
「ほ、本当に、佐吉なの…?」
「本当だ」
回された手に、そっと触れる。
「…ただいま」
「……遅い」
穏やかな時の中で。
二人は微笑み合っていた。
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