戦国無双短編 | ナノ
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「紅蓮と申します」


つい数日前、新たに入った女がいた。

正体は誰も知らない。

秀吉様が言うには、"未来"から来たとのこと。

やはり、俺は到底信じることができずにいた。


顔を合わせても、女は軽く礼をするだけ。

それは俺だけに限ったことではない。

人と関わるのを避けているように見える。


ただ、あるときに、きっかけは訪れた。












「お前は一体何者なのだ」

「………」


三成は紅蓮の腕を掴み、話し掛ける。

だが、一向に話さない。

それどころか、俯いたままで目を合わせることもしない。


「何とか言え」

「…失礼」


紅蓮は三成の手を叩き、どこかへ逃げるように走って行った。


「…左近」

「はい?」


近くにいるであろう部下を呼び、三成は複雑そうに問うた。


「お前はあいつをどう見る」

「ん〜、怯えているように見えますね」


難しそうに言う左近を見て、三成はため息をついた。








その日の真夜中。

三成は厠に行く途中で紅蓮を見つけた。


庭にうずくまり、なにかを呟いていた。


「…も………な」


見つからぬよう気配を消して、耳をそばだてる。


「…………に、ち………な」


もう少しで、聞き取れる。


三成は更に距離を縮めた。



「誰も、私に関わるな」

「―――っ」


言葉を失った。





「私は独りで良い。孤独で良いんだ。私に、誰も私に関わるな…」

「………」



これが、紅蓮の本心か?




「人間なんて、嫌いだ。人間が一番嫌いだ…」


消え入りそうな声で、三成に気付かずに呟く紅蓮。

その後ろ姿は、酷く寂しそうだった。



「人を信用して、何になるんだ…人なんて信用できるものか。人は、すぐに裏切るんだ…」


以前、誰かに裏切られた事があるようだ。

この世界では当たり前。

だが、ここまで追いやられるほどに、酷い目にあったのかと思うと、人に怯えても仕方ないのかもしれない。


ただ、放っておけなかった。



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