戦国無双短編 | ナノ
♭♭♭
「―――紅蓮」
「っあ、三成さん…」
風呂上がりらしい。
なまめかしい雰囲気を醸し出し、目の前に立つ男を、紅蓮は頬を染めながら見上げる。
「お前も入れ」
「え、でも…着替えもありませんし…」
言い澱む紅蓮に、三成は無言で何かを手渡す。
そして紅蓮を風呂場に押しやった。
手の中にあるのは、バスタオルと…
「着替え…?」
下着と洋服。しかも女物。
「…………………」
どう反応したら良いのか、紅蓮はほとほと困り果てた。
「ちっ、左近め…」
紅蓮に手渡した着替えは、三成が前に左近から贈られたものだった。
『女性を家に泊めるなら、このくらいはあった方がいいですぜ』
『…左近、貴様』
『ああ、それを買ったのは社長婦人ですよ。届けるように頼まれただけです』
『………………』
社長婦人は、いつも三成を誰かとくっつけようとする、秀吉社長の奥方である。
しかし、これでは三成が過去、女を連れ込んだことがあると言っているようなものである。
三成はとりあえず、紅蓮が出てくるのを待つことにした。
「…三成さん」
「上がったか」
風呂場の方から、紅蓮がそろそろと出てくる。
多少(?)露出が多い服だったことに三成は驚きながらも、とりあえず座るよう促した。
「…三成さん、お聞きしても良いですか?」
「……何だ」
三成は冷蔵庫からビールを二本持ってきて、一つを紅蓮に手渡す。
受け取りながら、紅蓮は質問を続けた。
「どうして、私に……キスをしたんですか?」
あやうくビールを吹き出しそうになりながら、三成はテーブルに、まださして中味が減っていない重たい缶を置いた。
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