戦国無双短編 | ナノ
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隣に居る三成を気にしつつ、次なる目的地は何処だろうかと考えていた。
不意に車が止まり、目の前にそびえ立つ建物を見て紅蓮は息を呑んだ。
「…あ、の……?」
日本で一番高いといっても過言ではない高級マンションだった。
「俺の家だ」
爆弾発言だとも取れるような言葉に、紅蓮は顔を赤くした。
「着いて来い」
エレベーターで五階まで上り、真ん中辺りの扉のキーロックを外す。
ロック解除された扉を開け、三成は部屋に入った。
「……しまった」
お世辞にも、綺麗と言えない部屋に、三成は舌打ちをする。
が、しかし。
よく見れば、散乱しているのは書類とおぼしきA4サイズのプリント。
ガサガサとそれらを纏め、三成はソファーに紅蓮を座らせた。
三成が姿を消して、紅蓮はため息を着いた。
怒らせた筈なのに、三成から怒声が飛ぶでもなく。
むしろ、泣いてしまった自分に、彼なりに優しくしてくれた。
「……あ」
テーブルの上に乗っている一枚の写真。
そこには、社員旅行で勇気を出して撮ってもらった、自分と三成のツーショット。
不機嫌そうな表情の三成。
その横で、恥ずかしいながらも笑顔でいる自分。
なぜこの写真を、彼が持っているのだろうか?
焼き増しを頼まない限り、彼がこれを手に入れることはない。
確か、この写真を撮ったのは――――
「…島さん」
島左近。
三成の昔からの知り合いらしい。
普段は何かと三成の女関係を聞きたがり、何かあればくっつけようとする、ちょっと困った人。
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