戦国無双短編 | ナノ
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二人が入って行ったのは、部屋が薄暗いデザインのバーだった。
カウンターに座る三成に続き、紅蓮も隣に腰を下ろす。
聞くべき、なのだろうか?
どうして自分にキスをしたのか…。
(きっ、聞けない…)
「…おい、何をしている」
「わぁぁぁ!」
「っ馬鹿!」
ガシャン
いつのまにか目の前に置いてあったカクテルを、三成に声を掛けられ驚いた紅蓮が薙ぎ払った。
そのままカクテルは飛び、三成の鎖骨辺りで止まったかと思うと、コップはバラバラに砕け、破片が飛び散った。
「…あ、……ごっ、ごめんなさっ、…!」
―――最低だ
キスされたからといって、変に浮かれて。
そして今度は服にカクテルを零して。
ハンカチを片手に、突然泣き出した紅蓮を前に、三成は戸惑っていた。
(泣いている女など、どうしたら良いか知らないのだよ!)
三成は立ち上がり、金をカウンターのテーブルに載せた。
「…紅蓮、来い」
泣いている紅蓮の腕を掴み、引く。
しかし、力の抜けきった体は言うことを聞いてくれるはずもなく。
「…ちっ」
三成は紅蓮を背負った。
「み、三成さ…」
「泣くな」
店を出て、車の助手席に紅蓮を座らせる。
不器用に扉を閉め、自身は運転席に腰を落ち着ける。
「三成さん…」
「泣くな。お前が泣いていると…………困る」
紅蓮が三成の顔を見る。
三成の頬が、微かに赤くなっているのは気の所偽だろうか?
本日二度目の、何とも言えない居づらい沈黙が降りた。
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