さんばん
まさか…
「…元就、くん?」
「そなたは…」
やっぱり。ブランコに座っていたのは元就くんだった。
…でもなぜ彼は夜の10時を過ぎたというのに、こんな公園で一人でいるのだろうか。
「どうしたの?家出?」
「貴様には関係な…」
「あります!」
まったくもう。どうして彼はこんな言い方しかできないのだろうか……ああ、もしかして。
前に、発言できない人間についつ書かれた本に書いてあった、『実は彼らは小さな頃から頼ることなく過ごしてきたすごい人間なのだ。それは頼れない状態、はたまた頼る人間がいなかったからである』という文にあてはまる人間なのかもしれない。
私、元就くんを誤解してたのかも。ごめんね元就くん。
…だったら尚の事、私に頼らせなくっちゃ!
「元就くん、どうしてこんな場所にいるの?」
「……鍵を忘れた」
ポツリと呟いた彼は、眉間に皺を寄せていた。何をそんなに思い詰めているのかなぁ?
「学校に?」
「家にだ。家の者は今朝から旅行に行っておらぬ故、家に入れないのだ」
ああ、だから帰りのHRであんなに悩んでいたのか。
…もう、仕方ないなぁ。
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