いちばん
九月下旬。
他の学校よりやや遅めに体育祭が開催された。
校長である織田先生が体育祭に使用するようなものとは到底思えないほどの大きな銃を鳴らした。
それが開催の合図だったらしく、生徒たちは声を張り上げた。
みんな元気だなぁ。
それなのに私の気分は落ち込んだまま。
元就くんに避けられているってだけなのに、どうしてこんなに苦しいのかな…?
…そうだ。夏休みの間、一緒に住んでいたからだ。仲良くなったと思っていたからだ。
特別な感情なんてない。
生徒に避けられて、ただ悲しいだけなんだ。
ふと、思った。
「特別な感情?」
あるはずない。
初めての生徒だから、そういった意味では特別なのだろうけれど。
「そっか、初めての生徒だからなんだ」
ようやく分かった。
悲しみが深い理由。
なんだ、そういう事だったのか。
「よしっ、頑張るぞ!」
教師としての初めての体育祭。
今日は生徒たちの思い出作りに協力して、そして元就くんと接触しよう!
「私は確か、教師と生徒の二人三脚に出るんだったよね」
相手は誰だったかな?
プログラムを見て出場者の欄を見た。
「政宗くんとだ」
何か嫌な予感がする。
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