にばん
「ダメです。風邪を治さないとクッキーはあげません!」
「なっ、貴様!そうやって甘言をいっておいて全て食すつもりなのだろう!?」
「私はそんなに食い意地張ってません!」
「我は騙されぬぞ!」
どういう意味だコラ。私は嘘なんかつかないのに。
「…っ」
「ああもう、ほらっ!」
フラフラしている彼を支え、何とか2階に上がる。
そんなにフラフラなクセにクッキーを食べるだなんて。そっちこそ食い意地張ってるんじゃない。
私は元就くんを寝かせ、頭を撫でてあげる。
「まっててね」
それだけ言って、私は階下へ急いで降りていった。
そして冷蔵庫を開けてプリンを取り出す。元就くんのためにこっそり買っておいたのだ。
こういったものなら食べやすいだろう。買っておいてよかった。
「ふん」
我の頭を撫でるなど。かような事をするのは叶架、そなたくらいのものぞ。
…我もどうかしている。あのような女に心を開きかけているなど。
「感謝してやらぬこともない」
一階にいるであろう叶架に、こっそり礼を言う。
目の前で言えればよいのだがな。
いつかは言うてやろうぞ。
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