よんばん
「元就くん、お家の人が帰ってくるまで私の家においでよ」
私がそう提案すると、元就くんは弾かれたように口を開いた。
「っな、何を…」
「さ、行こう」
有無を言わさぬように私は素早く元就くんの手を掴んで車まで歩く。
「…何故、そなたはこのような世話を焼く?」
「へ?」
元就くんらしかぬ言葉に首を傾げると、彼はまたポツリポツリ呟いた。
「我は初対面であのような言葉を吐き、それからもそなたを邪険に扱ったのだぞ?」
「あ〜…」
どうやら彼は多少なりとも罪悪感を感じていたらしい。
なんだ、いい子じゃん。
「気にしてないよ。確かに苛立ったけどさ。ほら、今はこうやってお話してくれてるじゃん」
私がそういうと、元就くんは、本当に薄く笑った気がした。
私と彼の距離が、ほんの少しだけ近づいた。
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