A 曹丕は虚を突かれたような表情をし、またすぐにニヤリと笑った。 「三成、私はお前を気に入った。だからだ」 「…それだけか?」 素早く切り返す三成。 第三者がいたならば、即刻立ち去りたいであろういたたまれない空気が、再び流れる。 しばらくは睨み合ったものの、観念したのか、三成は折れた。 「…わかった」 その返事に満足したらしい曹丕は素早く踵を返し 「行くぞ」 さっさと歩いて行ってしまった。 「一体何なのだ…」 曹丕の不可解な行動に、三成はただ困惑していたのだった。 曹丕が電話で呼び出したらしい車―――しかも高級車に乗った三成は、外を見ていた。 就職先は見つからず。 尚且つ今日は面倒な仕事を受けもって。 おまけに財布を持っていない。 そこで、はたとようやく重要な事を思い出した。 「…曹丕」 「どうした」 隣で偉そう(実際に偉いのだが)に踏ん反り返っている曹丕を見上げる。 三成はため息を着いた。 「俺は金を持っていない」 「私が払う。三成は気にするな。もとよりお前に払わせるつもりはないのだからな」 俺様よろしくニヤリと笑う。 三成は眉を寄せた。 「今回は私の我が儘だ。それに付き合うお前への礼だとでも思えばいい」 そして、三成の、男にしてはやや長い茶髪を優しく撫でる。 「…わかった」 これ以上は無駄だと判断した三成は、またため息を着いたのだった。 . 戻る |