A 初めて食べるものばかりだったため、三成は少々食べ過ぎてしまった。 と、いうより曹丕に食えと言われたため、下手に断れなかっただけなのだが。 「三成、ついて来い」 ちょいちょいと手招きしながら曹丕は赤い絨毯を踏み、階段を上がって行く。 三成もそれに習い、曹丕の後をついて行く。 広い背中。 前を歩くその姿はやはり綺麗で、三成は見とれていたが、やがて頭を振る。 少しだけ開いた距離を詰め、目的地までただひたすらに歩いた。 「ここが私の部屋だ」 開かれた扉の向こうには、整頓された殺風景な部屋。 曹丕が入るよう促す。 三成は素直に従い、部屋に足を踏み入れた。 「…座れ」 曹丕が指差すのはベッドの上。 三成は何をするのか検討がつかないので、とりあえず座る。 「秘書になる気はないか?」 「…どういった環境で仕事をするのかがわからない」 「常に私の側にいるだけでいい」 普通に聞けば、何という殺し文句かと思う。 あくまで普通なれば。 だが、この二人の間には普通が存在していないように感じる。 それは互いに感じ取っている。 しばらくの沈黙の後、三成は呟いた。 「…やる」 納得のいく答えを聞けた曹丕は、携帯を取り出して電話を掛けた。 『はい、どうしました?』 「新しい秘書は見つかった」 『わかりました。募集は直ぐに取りやめいたしますね』 「ああ」 たったそれだけを交わし、携帯をなおした。 「…私は気に入ったモノは全て手に入れる」 三成は身構えた。 本能がそうさせたのだ。 曹丕は含みのある笑みを浮かべたまま、ベッドに座る。 手に体重をかければ、スプリングの軋む音がした。 . 戻る |