request | ナノ




演劇部の部室にはいろんなものが置いてある。
衣装や小道具、この前の劇でつかったものがたくさん転がっていた。
そんな部屋だけど落ち着くのは何でだろう?


昨日作りあげた桃太郎の台本をぱらぱらと見ていた。


桃太郎、猿、犬、雉は全員女の子なんだ♪
でもそのまんまだとつまんないから桃子と猫、狼、孔雀ってことにした。

千鶴ちゃんやお千ちゃん、君菊ちゃんに小鈴ちゃんといったとびきり可愛い子にお願いする予定。
もうこれだけで男子生徒の心はがっちりこっちのもんでしょう!!!

桃子が千鶴ちゃん、猫がお千ちゃん、狼は小鈴ちゃんで孔雀は君菊ちゃん。ぴったりじゃない?

で、何かと人里にきて悪いことをする鬼を退治するってお話。
ちなみに鬼は総司と平助ね。あと数人、私に台本を書かせようとした奴らにしてやる…。



桃子は弱虫だから鬼にびびっちゃって戦えなくて。
だけど鬼達はそんな桃子に恋しちゃうの。
戸惑いつつ、だけど戦うことになって…。


 「あー桃子の最後の攻撃何にしよう。」


どうしよう。
桃子の必殺技。
千鶴ちゃんがやったらおもしろそうな技あるかなー。


ふと視線を上げるとソファが目に入った。
その上には大きなうさぎのぬいぐるみ。
多分私より少し小さいぐらいじゃないかな。
誰かが部屋にあると狭く感じるからって部室に持ってきたやつ。



立ち上がると私はソファに向かう。
ゆっくりとそのぬいぐるみを持ち上げた。


 「うーん…。千鶴ちゃんの攻撃か。」


ただぽかぽか叩いても面白くないし。
剣で斬ったふりなんて…ねえ。総司と平助じゃよけちゃいそう。
意外性がほしいよね。



あ。




 「これだ!!」



そう言うのと私がうさぎにバックドロップをかけるのはほぼ同時。



ソファにぼすんとうさぎが沈む。
千鶴ちゃんがバックドロップとかしたらおもしろくない!?って意外過ぎる。できれば総司にしかけてほしい。



 「よし!千鶴ちゃんに練習してもらって…。」



相変わらずうさぎにバックドロップをかけたままの私が。




斎「…………。」



 「…………。」



部室のドアを開け、こちらを見ている一と無言で見つめ合うことになるなんて思ってもいなかった。




え?
あれ?
夢…かな?
夢…だよね!?



斎「…ノックをしたつもりだったのだが。」



 「ぎゃあああああ!!!!」



ものすごいスピードで起き上がり背筋を伸ばして座る。ついでにうさぎも横に座らせる。



見た…よね?
ぬいぐるみにバックドロップしたところ見たよね!?!?!


何が悲しくて好きな人にそんな姿を見られなくちゃいけないの!?
絶対変な奴だと思われた。
絶対ひかれた。
やばい、泣きそう。


あ、そうだ。
説明。
説明しなくちゃ!!!



 「あ…あの、これは。その、劇で…。」


斎「大丈夫だ。…見ていない。」



嘘ですよね。
見ていないとか言っちゃう時点で何か見てること確実じゃん!
ああ、目を逸らさないで!お願いだから!!!


斎「名前、俺で良ければ話を聞こう。一人であまりため込まないように…。」


 「劇の一部だから!劇でやるやつだから!」



ストレスたまっておかしくなったとか思ってるんですか!?




斎「そうか。」



少しほっとしたような表情になって、一はやっとこっちを見てくれた。
私の前まで歩いてくるとうさぎを持ち上げ、横に座る。



 「っ!!!」



そのままうさぎを床に置くのかと思いきや、自分の膝にのせてぎゅっと抱きしめていた。




 (殺す気か…私を殺す気か…。)



うさぎのぬいぐるみを持っている一は殺人級に可愛い。
天然って恐ろしい。何も考えてないとかずるい。



それ以上そんな状態耐えられそうもないので一からうさぎを奪うとぽいっと床に置いた。




 「…で、どうしたの?こんなところに来るなんて。」



斎「そうだった。あんたを呼びに来たのだ。」


 「え?」


斎「雪村と放課後に約束をしていただろう?実はそれは…。」


あ、もしかして千鶴ちゃんに頼まれたのかな?


そのまま言葉を待つがいつになっても一は続きを言わない。


 「一??」


斎「どうやら俺は…思ったよりもずるい人間らしい。」


 「どういうこと?」


斎「あんたは今日が何の日か、全く覚えていないのか?」


 「今日…?」


今日って何かあった?
えーっと…確か…。



あれ?
今日って。



斎「あんたの誕生日だ。」


 「あ!」


忘れてた!
徹夜してぼーっとしてたのもあるけど。
ここ数日忙しすぎて誕生日なんて。



斎「名前、誕生日おめでとう。」


 「ありがとう!」



誕生日を忘れてたなんてどうかしてる。
だけど。


一番最初に好きな人に祝ってもらえるってすごい幸せなことじゃない?


 「よく覚えてたね??」


斎「それは…///」


 「それと、ずるいって何??」


斎「その…。」



頬を赤くしながら目を逸らす一は何だかおかしい。
いつも冷静で、慌てるところなんてほとんど見たことない。

小さく息を吐くと一は話しだした。

prev / next

[目次]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -