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 「眠い…。」


私の瞼が重力に逆らうということを忘れたかのように下がってくる。
気を抜いたらもう視界は真っ暗。
ついでに思考も遮断される。
正直一時間目なんて気が付いたら終わっていた。ごめんね、永倉先生。



昨日ほぼ徹夜で台本を書きあげた。
もうね、私に脚本担当を押しつけた総司、平助は覚悟しておいたほうがいいよ。
あんた達鬼役にしてあげたからね。
ガチでやられてしまえばいい。


そんな物騒な考えが伝わってしまったのか。
眠気と戦っている私の前にいつの間にか平助が立っていた。



平「大丈夫か?名前。」


 「あ、平助。おはよう。」


平「おはようってお前…もうすぐ二時間目始まるぞ?」


 「そうですか…そうです…か…。」


平「おい!起きろって!」


夢と現実の狭間でよくわかんない。
話してるのは現実なんだよね?


平「ったく…ほら。」


差し出された平助の手には眠気覚ましの辛いガム。


平「とりあえず食べておけよ。次は土方先生の授業だし。」


 「ありがと。」


なんとかガムを口にいれると一気に口内が涼しくなる。少しだけ眠気がとんだ。


 「あー…マシになったかも。ありがとうね、平助。」


思わず手を掴んでブンブンふった。
土方先生の授業で寝たりしたら放課後のケーキどころか地獄の職員室行きだもん。


平「別にたいしたことしてねえし…///」


目を逸らしながら手を放されると平助は言葉を続ける。


平「あ…あのさ!名前!」


 「ん?」


平「今日暇か?」


 「え?今日?今日は…。」



土「おら、てめえら席つけ!チャイム鳴ってるだろうが!」


まだざわついている教室に土方先生が入ってきた。立っている生徒はものすごいスピードで席に戻っていく。


平「ああ、土方先生来ちまった。名前また後で!」


 「あ、うん。」


平助も急ぎ足で自分の席に戻っていった。
何だったんだろう?
今日暇って言ってたよね??
放課後は千鶴ちゃんとデートだからなあ。



土「教科書104ページ開け。」


土方先生がすらすらと板書していく。
教科書を眺めながら黒板を写していくとコロンと机に紙が飛んできた。


飛んできた方向を見ると隣の席で総司が笑っている。


紙を開いて見ると見慣れた総司の字があった。


――土方先生の授業、つまんないね。


ほんと君は土方先生の授業だけは真面目に聞かないよね。


――そんなこと言わないでちゃんと受けなさい。


一言書くと総司に向かってメモを投げた。


楽しそうに紙を受け取り、開くと私の方を見てニヤリと笑う。
そしてゆっくりと口が動いた。


――無理



と。


すると総司はまた紙に何かを書いて私へ向かって投げた。



――ねえ、名前ちゃん、今日の放課後暇?



あれ?総司も?
何かあるの?



今日は千鶴ちゃんとデートなのと紙に書く前に、私の手元にあった総司からのメモがふわりと浮いた。




…正しくは取り上げられた。




それはそれはゆっくりと。
首を斜め上へ向けていく。




土「何してんだ、てめえら。」



ぎゃあああああ!
いつの間にいたんですか!?土方先生!
声も出せずに心でパニックになっている私とは真逆の態度を総司はとる。



沖「何って…手紙交換ですけど?」


土「お前今何の時間だと思ってんだ!?」


沖「何のって古典でしょ?土方先生のつまらなーい古典の授業。あまりにもつまらないから名前ちゃんに手紙書いたんですよ。」


土「てめえが授業聞かないのは勝手だが、隣を巻き込むんじゃねえ。名前、お前も手紙を返すな。放っておけ。」


 「は…はい。」


沖「あーあ、これじゃこっち読んでる方が楽しいかな。」


土「あ?………ってお前それどっから持ってきた!?」


沖「え?落ちてたから拾っただけですけど。」


電光石火の早技で総司の手元からノートのようなものを奪い取る土方先生はいつもの落ち着いた雰囲気じゃなくて。
完全に慌てふためいている感じだった。

逆に総司なんてずっとニヤニヤしてるし。
あれだな。
弱みを握った感じだな。

あのノート何が書いてあるんだろう…。


土方先生が小さく舌打ちをして前の方へ戻っていった。
ちらりと豊玉って字が見えた気がするんだけど…後で直接聞いてみようか。

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