「おもしろかったね!」
斎「ああ。評判通り良い映画だったな。」
やってきましたクリスマスイブ!
ランチを一緒に食べた後、街を少しフラフラしてから映画を見た。
クリスマスの時期だからか恋愛ものの映画が多かったけれど私達が選んだのはコメディだった。
おもしろいほうがいいし、恋愛ものってなんか恥ずかしくなっちゃうじゃん。
キスシーンとか並んで見られないよ。体がかゆくなりそうだよ。
夕方五時も過ぎればあっという間に外は暗くなる。
特にうちに門限はないんだけど
斎「そんな遅い時間まで連れ回すわけにはいかない。」
という一の一言により夕食を食べたら帰ることになっていた。
うちの両親は一に絶対の信頼をおいてるから何時に帰っても大丈夫なんだけどね、実際。
一の真面目なところは好きだけどさ。
普段はなかなか入らないような、オシャレなお店で夕食を食べた。
はしゃいでしまう私を一がしっかりとおさえ、なんとか静かに時間を過ごした。
少し大人になった気分。
「イルミネーション綺麗だね。」
斎「ああ。そうだな。」
お店を出て少し歩くことにした。だってせっかく町中が綺麗なんだし。
あちこちの木にキラキラと光る飾りが施されていてたくさんのカップルが肩をよせあって眺めていた。
だけど私たちは近からず遠からずの距離を保って歩いていた。
私から手を繋ぎにいくことはよくあるけれど一から繋いでくれることは少ないんだよね。恥ずかしいんだろうけどちょっぴり寂しくて今日は自分から繋がないと誓ったんだ!
すぐに後悔したけどね!
ちらりと一の方を見るとイルミネーションの光が瞳に反射してキラキラしていた。
綺麗だな。
かっこいいな。
近づきたいな。
好きだな。
どうしようもない思いが急に込み上げてきた。
胸がきゅんって音をたててるみたいで苦しい。
手、繋ぎたいよ。
じっと見ていた私に気がついたのか一がこっちを向いた。
なのに言葉が出なくて私はずっと見つめてしまう。
一も何も言わずに私を見ていた。
何これ。
時間が止まったみたいだ。
もうその後は全てがスローモーションだった。
一のあったかい手が私の手に触れた。
もう片方の手は私の頬に触れた。
少し伏し目がちな一の顔が近付いて。
自ら視界を消し去ると唇にふわりと温もりを感じた。
ゆっくり目をあけるとまだ一が目の前にいて、その後ろはキラキラした世界が広がっていた。
「はじ…。」
声が吸い込まれる。
キスをするのは初めてじゃないのに顔が熱い。
斎「冷えてるな。」
一の指が頬から唇に移動した。
くすぐったくて思わず目を逸らしてしまう。
「一…外でこんなことしないキャラじゃん。」
ほんと可愛くない自分に嫌気がさす。
言いたいことはこんなことじゃなくて。
斎「確かにいつもは外でこういうことはしないが…。」
一の手が私の背中にまわった。
ぎゅっと抱きしめられる。
ねえ、一。
周りに人がいるよ?知り合いがいるかもよ?
斎「名前を見ていたら、したくなった。」
無理しないでよ、顔真っ赤だよ。
こんな甘い一が見られるなんて、嬉しすぎて泣いちゃうじゃん。
どうしようどうしよう。
どうしようもなく好きだ。
斎「…好きだ。」
一の言葉に驚いてしまう。
どうして私が言いたい言葉を先に言っちゃうかな?
それとも私の気持ちは全部一に伝わってしまうんだろうか?
「私も好き…。」
なんとかそれだけ言うと一が私をゆっくりと離した。そのまま手を繋がれ歩き出す。
斎「…このまますぐに帰る気になれないな。」
「私ももう少し一緒にいたいよ。」
斎「まあ明日も一緒なんだが。」
「明日はホームパーティだもん。みんないるからくっつけないよ!」
斎「くっついてもかまわないが?」
「ええ!?」
斎「嘘だ。」
びっくりした!なんかこの甘い空気にのまれて一が変になったのかと思った!
斎「…少し遠回りして帰るか?」
「うん!!」
一の提案に笑顔でこたえる。
だってもう少し二人きりでいたいから。
斎「大きな靴下でも買いに行くか。」
「え?もしかしてツリーの下に置く!?」
斎「そういうの好きだろう?」
「うん!サンタさんに手紙書こうよ!」
斎「…日本語は通じないぞ。」
「えー…一、まかせた!」
少しは努力しろと呆れた声がふってきた。
でもきっと優しく教えてくれるんだよね。
なんだか楽しくなってきた!
小さい頃に戻ったみたい。
「来年もその先もずっとクリスマスを一緒に過ごせたらいいな。」
斎「そのつもりだが。」
私の願いをあっさりと聞き入れる一に嬉しくなって。
「一、大好き!!!」
斎「俺も好きだ。名前。」
腕にしがみつく様に愛を伝えると一も答えてくれた。
私の大好きな優しい笑顔で。
終
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