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 「小さい頃の夢を見たの。」


斎「小さい頃?」


ココアを飲みながらノートにさらさらと問題を解いていく一はシャーペンを置くと私の方を向いた。


 「うん。小学校の二年生ぐらいかな。うちでクリスマスパーティしたんだよ、覚えてる?」


斎「ああ。確か俺の両親が仕事でいなかったから…。」


 「そう。うちで一緒にご飯食べたんだよ。ツリーの下に靴下置いてさ。ケーキ一緒に食べて…可愛かったよね、私達。」


斎「名前はサンタを信じていたからな。」


 「え!?一信じてなかったの!?」


斎「小学校に上がる頃にはサンタが存在しないことに気がついた。いや、存在しないというのはおかしいか。今は公認のサンタクロースというものが存在するからな。しかし自分のもとへ届くプレゼントは親が置いているものと気付いたのは保育園の年長の時だ。」


 「夢がない!!!夢がないよ!」


斎「気付いてしまったものは仕方ないだろう。」


 「そりゃそうだけど…。」


一は昔からちょっと大人で、同い年だというのに背伸びしても届かない気がして時々焦る。
勉強もスポーツも何もかも敵わない。


 「ねえ一!今年のクリスマス何する!?」


クリスマスまであと一週間。
きっと当日は家族でパーティするだろうからイブは二人でデートしたい。



 「私一とデートしたい!だめ??」


斎「…だめなわけがないだろう?」


ふふ。
口調は落ち着いているようだけど少しだけ目が泳いだよ。
何もかも敵わない一だけど恋愛だけは同じくらいの位置にいるんじゃないかなと思うんだ。
ちょっと近づいただけで目に戸惑いの色が見えるからね。



 「よし!デートプラン考えよう!ね??」


テーブルの上で無防備に置かれていた一の左手に私は両手を添えた。
ぴくりと動いたのを見逃してないよ。
ほんと照れ屋さんなんだからっ!


可愛い〜と思わず口からこぼれると宿題が終わってからだと手を払われた。
この様子だと本当に宿題が終わるまでデートの話は聞いてくれなさそうだ。



 「ちぇっ。」


斎「…さっさと終わらせてゆっくり話した方がいいだろう?」



ふわりと微笑んで私の頭を撫でるのはずるい。
完全に子供扱いなのに嬉しいと思ってしまう自分がいる。


 「がんばります。」


斎「ん。」



私の頭から手が離れていく。
もう少しだけ撫でてもらいたかったな。
シャーペンを持った一が私の視線に気がついたのか、口角を上げた。


斎「全部一人で解けたら褒めてやるが?」


 「それは撫でてくれるってこと?」


斎「そういうことだ。」



単純な私はその一言にものすごいやる気をだしたんだけど。
一問間違えて撫でてもらうのはお預けとなりました。

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