次の日。
珍しく遅刻することなく学校に辿りつくと風紀委員として校門のところに立っていた一君が目を丸くして迎えてくれた。
斎「…今日は雨でも降りそうだな。」
沖「他に言うことないの?一君。」
斎「おはよう。総司。」
沖「…うん、おはよう。」
一君ってどっかずれてると思うんだよね。
僕だけかな?
その後一言二言会話してから僕は教室へ向かった。
自分の席につくと名前の姿を探す。
沖(あ、いた。)
今日は日直なのか黒板の所でチョークの準備をしていた。
僕がずっと視線を送っているとバチッと目が合う。
わかりやすいぐらいバッと目を逸らされる。
まあ想像はしていたけどね。
顔が真っ赤だよ。可愛いな。
きっと名前のことだから告白されて恥ずかしくてどうしていいかわかんないってところだな。
チャイムが鳴る直前に一君も教室に戻ってきて、そのすぐ後に土方さんも入ってきた。
すごいと思わない?
普通妹の担任になることなんてありえないはずだけど何故か担任になってるんだよね。
土「進路希望の紙、後ろから集めろ。」
挨拶が終わるとすぐに土方さんがそう告げる。
そういえば今日提出日だったなとすっかり忘れていた僕は名前だけ書いて提出をした。
…まあ、案の定呼びだされることになるんだけどね。
他の先生経由で昼休みに土方さんから呼びだしをくらった僕は昼ごはんを適当に食べると職員室に向かった。
土方さんに呼び出されるのは最早常連だけど面倒だよね。
沖「失礼しまーす。」
土「総司!」
沖「うわっ。何ですか、土方さん。大声出して。」
土「何ですかじゃねえ!そして土方先生だろうが。」
職員室に入った瞬間、土方さんに怒鳴られる。
ほらもう新八先生とか左之先生とか驚いてるじゃん。
土方さんの所まで歩いていくと真っ白い紙を突き付けられた。
土「これはどういうことだ。」
沖「あー…忘れてたんです。」
土「だったら書いてから持ってくりゃいいだろうが。」
少し怒りが治まったのか土方さんは机に進路希望の紙を置くとその上にペンを転がした。
土「待っててやるからちゃんと書け。」
沖「決まってないです。」
土「は?」
沖「だから、決まってないですって。特にやりたい職業もないし。大学に行こうとは思うけど…。」
土「総司。」
横に座れと言わんばかりに土方さんは空いている椅子を引っ張って僕の近くに置いた。
仕方なくその椅子に座ると眉間に皺をよせた土方さんと向かい合う。
この顔はどうやらだいぶ怒ってるみたい。
小さい頃から見てるからそういうことだけはわかっちゃうんだよね。
沖「…怒ってます?」
土「何で怒ってるのかわかってるか?」
沖「うーん。進路決めてないから。」
土「違う。」
沖「え?違うの?」
土「お前らぐらいの年の奴がそう簡単に進路決めれねえことぐらい当たり前だろうが。俺が怒ってるのはそういうことじゃねえ。真剣に考えようとしないことに怒ってるんだ!」
土方さんがバンッと机を進路希望の紙の上から勢いよく叩く。
土「真剣に考えれば少しは何か書けるだろうが。そうじゃなくても聞きに来るぐらいできたよな?お前は何もしないでそのまま放置していただけだ。」
沖「それは…。」
ごもっともだけど。
土「…そんな適当な奴に名前をまかせられるか。」
沖「は?」
何でそこで名前が出てくるのさ!?
公私混合甚だしいよ!この人!!
土「ちゃんと自分と向き合えねえ奴が他人と向き合えるか!お前名前に近づくなよ!」
沖「それとこれとは話が別でしょう!?」
土「一緒だ!あいつにどうこう言う前にやることやりやがれ!!!」
そう言って土方さんは僕に進路希望の紙を突き返すと職員室から出て行くように言った。
沖「…もう、何なんだよ、あの人。」
進路希望の紙を持ってとりあえず教室に戻ろうと踵を返す。
少しイライラしていたせいか外の景色でも見ようと思ったのが間違いだった。
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