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ちらっと名前の方を見る。
教科書と問題集とにらめっこ中の彼女を観察してみた。


僕より小さい手とか。
思わず触りたくなる頬とか。
柔らかそうな唇とか。


小さい頃から見てるのに。
まるで全然違う女の子を見ているんじゃないかって思うときがある。
それぐらい彼女は可愛くなった。


じっと見ている僕の視線に気がついたのか、名前がこっちを見た。



 「総司?どうしたの?」


沖「ん?いや、今日小さい頃の夢を見たんだ。」


 「小さい頃?」


沖「うん。多分小学校一年生ぐらい。」


斎「それはだいぶ前の話だな。」



僕の言葉に一君も手を止めて話を聞いてきた。


沖「僕と一君が名前にお嫁さんになってって言い合ってたんだよ。」


 「え?!そんなことあった?」


斎「ああ、そういえばあったな。そんなこと。」


 「本当に!?」


沖「覚えてないの?」


 「うん。」


沖「ひどいなあ。僕の気持ちはあの時と変わってないのに。」


 「え…?」


あれ。
僕今さりげなく告白しちゃった?
でもいいか。本当のことだし。



 「総司はまたふざけて…。」


沖「ふざけてないよ。名前。僕は名前のことが好きだよ?」


 「ちょ…だっ騙されないからね!!ねえ、一?一も何か言ってよ!」



斎「…好きだ。」


 「は?」


斎「俺もあんたが好きだ。あの時からその気持ちは何一つ変わっていない。」


 「え…?はっ一まで何言ってるの!?」


沖「へえ、一君がまさかこんな形で言うとは思わなかったなあ。」


斎「総司こそ。まさかここで言うとは思わなかった。」


沖「でもまあお互いこっそり言うより良かったかもね。はっきりして。」


斎「ああ。その通りだ。名前、お前の気持ちを聞かせてほしい。」


沖・斎「「名前はどっちを選ぶ?」」


僕と一君は名前を挟むように座ってじりじりと近づく。
両サイドから来る僕らに名前は慌てて僕たちを交互に見た。


 「っ!?え!?あ…あの…ちょっと二人とも…冗談は…。」


沖「冗談じゃないよ。」


斎「本気だ。」


 「まっ待ってよ!いきなり言われても…。」


パニックになった名前が少し大きな声を出して僕たちを止める。
するとバタンと大きな音をたててドアが開いた。



土「てめえら名前に何してやがる!!」


 「お兄ちゃん!?」


まあ、わかってはいたけれど入ってきたのは名前の兄、歳三。
昔は僕と一君も歳三兄ちゃんって呼んでいたけれど今では土方さんって呼んでる。
だって僕達の高校の先生だし。



沖「何もしてませんけど。僕も一君も名前に思いを伝えただけです。」


斎「はい。ただ気持ちを伝えただけで他には何も…。」


土「名前に手ぇだそうなんて百年早いんだよ!そういう風にしか見れねえなら二度と家に入ってくるな!出て行け!!!」


沖「百年待ってたら僕達死んじゃうじゃないですかー。無理ですよそんなの。」


土「総司、本当にお前口だけは達者だな。」


 「お兄ちゃん落ち着いて!!」


プルプル拳を震わせている土方さんを名前が全力で止めていた。

でも僕も一君も悪くないと思わない?
高校生が好きな子に告白しただけで何でこんなに怒られなきゃならないのさ。


斎「総司、とりあえず今日は帰った方がよさそうだ。」


沖「はいはい。お邪魔しました。」


 「ご…ごめんね?総司、一。」


土「ったく、俺が居ない時に絶対入るなよお前ら。」



眉間の皺がいつもの二倍ぐらいある土方さんにお邪魔しましたと告げ僕と一君は名前の家を出た。
まだ来て三十分もいないのに。



沖「…立ちはだかる一番大きな壁って土方さんだと思わない?」


斎「…違いない。」



僕と一君はそれだけ言うとそれぞれの家に帰っていった。


普通だったら恋のライバルなわけだし、お互い同時に告白してこれからどうするだのなんだの話しあいもしそうだけど、僕たちはこんなもんだと思う。
付き合いが長いから余計な事を言わなくてもわかってるんだ。

結局選ぶのは名前だってこと。

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