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――バンッ!


ドアを開けようとしたのに後ろから伸びてきた手に閉められる。


振り向くとそこには普段見ることのない焦った顔をした斎藤先輩がいた。
斎藤先輩が両手を私の顔の横についているせいで動くことができない。



 「斎藤先輩…?」


斎「泣いているのか?」


 「だって…斎藤先輩…私のこと、本当に好きですか?」


斎「名前?」


 「お昼を誘った時も最初断られたし、さっきも手を…。私、傍に居たら迷惑ですか?だったらはっきり言ってください。」


はっきり言ってくれなんて強そうに言っているけど目からはぼろぼろ涙がこぼれている。


斎「泣くな、名前。」


斎藤先輩が慌てて私の涙をハンカチで拭ってくれた。
私はハンカチを受け取りそのまま目元を押さえる。


斎「その…。」


斎藤先輩を見ると困った表情のまま、だけど何かを言おうと言葉を探しているような気がした。


斎「すまない…学校では、なるべく離れていようと思っていたのだ。」


 「学校では?」


斎「俺もあんたも風紀委員だ。皆を指導する立場の俺達がずっと一緒にいたら示しがつかないのではないかと思ったのだ…。」


 「それで…そっけなかったんですか??」


自分じゃ考え付かないようなことだった。
みんなの前でいちゃついてたら示しがつかないってこと?
驚きすぎて涙もひっこんでしまう。
目を丸くして斎藤先輩を見ていると顔を赤くした斎藤先輩と目が合う。


次の瞬間。
思い切り抱きしめられた。


 「さっ…斎藤先輩!?!?」


斎「ずっと…こうしたかった。」


 「え!?あの!!」


手をバタバタさせようと思ったけれど、思ったままで終了。
だって完全に抱きしめられてるんだもん。


斎「本当は…もっと話をしたり、一緒に帰ったり…その…手も繋ぎたいと思っている。」


 「本当ですか?」


斎「ああ。だが…一度それを許してしまったら。」


 「たら?」


斎「止まらなくなりそうだ。」


 「え?」



少しだけ体を離され、背中にドアの感触。
そして唇に温もり………???


私今。
斎藤先輩とキスしてる!?!?



 「んっ!せ…先輩!」


斎「何だ?」


何だ?って…何だじゃない!
一気にいろいろ起こりすぎてついていけません!!!!!
さっきまで先輩の気持ちがわからなくて不安で泣いていたのに、もうキスしてるなんて。



斎「不安にさせてすまなかった。」


 「いえ…いいんです。」


そう言うと斎藤先輩はゆっくりと私から離れた。
もう赤い顔じゃなくていつも通りの冷静な斎藤先輩に戻っている。


斎「これからも学校では今まで通りになってしまうと思う。」


 「はい。大丈夫です!だって斎藤先輩の気持ち、わかりましたから。」


うん。大丈夫。
だって…私、ちゃんと恋人だって思えたから。


 「斎藤先輩、今度のお休み、どこか行きませんか?」


斎「ああ。名前の行きたいところに行こう。」


 「やった!あの…外なら手を繋いでくれますか?」


斎「っ…ああ。」


あ、また赤くなった。
斎藤先輩の可愛い顔、プライスレス!!!





その後も、やっぱり校内だとそっけない斎藤先輩だったけど、二人きりの時はこっそり手を繋いでくれたりするようになった。


そんなことがある度に私がにやけてしまって沖田先輩や平助達にからかわれることになるんだけど。


それでも幸せだからいいやと思ってしまう私なのでありました。






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