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 「と、いうわけで屋上いっきまーす!」


千「良かったね!名前ちゃん!」


平「きっと一君照れてるだけだって。屋上はあまり人もいないし、たくさん話してこいよ〜。」


ニコニコ笑顔の二人に見送られ、私はルンルン気分で屋上へ向かった。


斎藤先輩は口数も少ないし、表情もあまり変わらないし、冷たそうに見えるけどやっぱり優しいんだ。

きっとあまり笑ってくれなかったり、そっけなかったりするのは照れてるだけなんだな!
二人きりならきっと…ってやだ、何考えてるんだ私!!!


急いで屋上へ行くと斎藤先輩はすでにいた。
購買でパンを買ってきていたらしい。座ってパンと野菜ジュースを出していた。


 「遅くなりました!」


斎「いや、俺も今来たところだ。」



待ち合わせって感じがする!
私は斎藤先輩の横に座るとお弁当を広げた。


 「斎藤先輩とご飯食べるのは初めてですね!」


斎「そうだな。」


 「先輩、それで足りますか?私の少し食べます?」


お弁当のおかずを斎藤先輩の目の前に出すと少し戸惑いつつもじゃあ…と卵焼きをとろうとした。


 「ああ!手が汚れちゃいますよ。はい、どうぞ。」


斎「なっ…。」


私はお箸で卵焼きを摘むと斎藤先輩の口元へ持っていった。


斎「自分で食べられる…。」


 「いいじゃないですか。はーい。」


これですよこれ!
あーんとかやってみたかったんだ!
案の定斎藤先輩は目を泳がせ、顔を少し赤くして口を開けた。
そこへ卵焼きを素早く放り込む。


斎「…うまい。」


 「あはは、お母さんの手作りですけど。」


今度お母さんに教わって自分で作ろう!
そして斎藤先輩に食べてもらうんだ〜。

その後会話をしながらお昼御飯を食べ終えた。
お弁当箱をしまい斎藤先輩を見ると何だか考え事をしているみたい。


 「斎藤先輩?」


斎「ん…なんだ?」


 「いえ、何か考え事をしていたようなので…。」


斎「何でもない。」


どうしたんだろう?
ぼうっとしている斎藤先輩もレアなんで永遠と見ていられますけど。
何か悩み事があるなら聞きたいな。
私でも、何か役に立てるかもしれないし…。
いや、斎藤先輩が悩むようなことに私が良い考えを出せるはずもないけれど…。




ふと視界に入る斎藤先輩の綺麗な手。



―お前も少し勇気出して近づけよ?手つなぐのって別に男からじゃなくたっていいんだからさ!―



平助の言葉を思い出す。
私も近づいていいのかな?


手…繋ぎたいな。



そっと自分の手を斎藤先輩の手に近づける。
後少し。
もう少し。


斎藤先輩の手に触れた瞬間。


斎「!?」


バッと思い切り手を避けられた。


 「え?」


斎「あ…いや…その…。」


今、完全に避けたよね?
私に触れられるの…嫌なのかな?


 「あ…ごめんなさい…私。」


斎「違う、名前、今のは…。」


 「いいんです。」


あまり笑ってくれないのも、
そっけないのも、
やっぱり私のこと本気で好きじゃないから?
付き合っていると思ったのは私だけですか?



私はお弁当を掴んで屋内に入るドアまで走った。
これ以上ここにいたら。
絶対泣いちゃうから。

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