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 「今日は朝から笑顔が見れちゃいました〜。」



千「良かったね!名前ちゃん!」



平「いや…何ていうか…あのさ、一つ聞いていいか?」



私の報告をまるで自分のことのように喜んでくれる千鶴ちゃんの隣で平助は困ったような、呆れたような顔をしていた。


次は音楽の授業だから移動なんだけど、だいたい移動する時はこの二人と一緒に行動している。入学してすぐに仲良くなったんだよね。

平助は剣道部に入っているから斎藤先輩や沖田先輩と仲が良くて時々私の知らない斎藤先輩の話を聞けるからとてもとてもありがたいのだ。



 「何〜??」



今なら何でも答えるよ!
だって朝から斎藤先輩パワーを充電してるからね。



平「…お前さ、一君と付き合ってるんだよな?」


 「うん。もちろん!」



平助が斎藤先輩を一君と呼ぶのは昔からの知り合いだかららしいんだけど。
…うらやましいな、このやろう。



平「なのにお前一君が笑っただけで嬉しいの?そんなの彼女なら普通に見られるじゃん。」


 「嬉しいよ!!!斎藤先輩の微笑みなんてなっかなか見られないんだからー!!」


千「え!?そうなの?」


平「それってさ…。」










沖「本当に付き合ってるのかなー?」












主・千「「きゃあ!」」



平「うわっ!…って総司!びっくりさせんなよー!!!」



私達の後ろからいきなり会話に入ってきたのは沖田先輩だった。
そういえばここ二年生の教室の近くだ。


沖田先輩はにこにこしながら私を見るとガシッと肩に手をまわす。



 「おっおおお沖田先輩!近いです!」


沖「えー?肩くむぐらいいいじゃない。それよりさ、名前ちゃん、本当の一君と付き合ってるの??」


 「え?」


沖「もう付き合ってどれぐらい?」


 「えっと…一ヶ月ぐらいです。」


沖「キスした?」


 「はっ!?」




なっなんてこと聞くんですか!
セクハラで訴えたら勝てますよ、沖田先輩!




平「おっおい!総司!やめろよ!」



平助が勢いよく私から沖田先輩を引きはがした。するとあっさりと離れた沖田先輩は楽しそうに言葉を続ける。



沖「その様子じゃまだかな?じゃあ手繋いだ?デートした??」


 「あ…あの…。」


沖「それもまだなの?これじゃ本当に付き合ってるか怪しいね。」


クスクス笑う沖田先輩に胸がざわついた。
何とも言えない感情。
不安…?



千「沖田先輩!人には人のペースがありますから…。」


沖「とか言って、平助君も千鶴ちゃんも心配してるんでしょ?」


平「うっ…。」


千「そんなことないです!」


 「私はちゃんとお付き合いしてます!」


沖「ふーん。でも一君はどう思ってるんだろうね?…ま、一君に捨てられちゃったら僕のところにおいでよ。」


またねーなんてのんきな声で手をひらひらと振りながら沖田先輩は教室の方へ戻って行った。


呆然と立ち尽くす私に平助と千鶴ちゃんが慌てたように声をかける。



千「大丈夫だよ!斎藤先輩は真面目な人だから…その…。」


平「そうそう!一君がそう簡単に手だすわけないんだって!」


 「…私…本当は付き合ってないのかな…。」


平「大丈夫だって!一君はお前のこと大事に思っているだけで…。」


 「でも、手もつないでないよ…。どこも行ってないし。そんなことある?」


千「名前ちゃん…。」


千鶴ちゃんが心配そうに私を見ていた。

でも沖田先輩の言うとおり。
私デートもしてないし、それどころか一緒に帰って寄り道するとかもしてない。
風紀委員の活動で会うのとメールするぐらいで。

しかも学校では斎藤先輩そっけないし。
まあそれは今に始まったことじゃないけど、彼女になったからって態度が前と変わらない。


平「じゃあさ!直接聞いてみようぜ!昼飯一緒に食べようって誘ってみろよ!その時に聞いてみろって!」


 「でも…。」


平「あ…あと、お前も少し勇気出して近づけよ?手つなぐのって別に男からじゃなくたっていいんだからさ!」


千「そうなの?」


平「え?あ…まあ、そりゃ好きな子だったら何されても嬉しいだろ。」


千「だって!名前ちゃん!がんばろう!」




音楽の授業が終わった後、斎藤先輩にメールを入れようか迷っていた私は携帯を見ながら廊下を歩いていた。



すると後ろから大好きな声。




斎「…名前。歩きながら携帯をいじるな。」



 「斎藤先輩!!!」


すぐに携帯をポケットにしまい、斎藤先輩の所まで走って行く。
せっかく会えたんだもん。直接言ったほうがいいよね。



 「あの!斎藤先輩!!」


斎「どうした?」



いつもこんなに勢いよく話すことなんてないから斎藤先輩は少し驚いたような表情をした。



 「あの…お昼、一緒に食べませんか?」


そういえばお昼を一緒に食べるということもなかったな。
一緒にご飯を食べるとか恋人っぽい!


と、一人で楽しくなったいた私に重い石が頭に振ってきたような返答があった。


斎「…すまないがそれはちょっと…。」


 「え?」


斎「…。」


あれ、何か考え込んでる。
もしかして先約が?
それ以前に私とご飯食べるのが嫌だとか!?
どうしよう、私何か嫌われるようなこと…。



斎「名前、どうした?苦しそうな顔をしているが…。」


 「…いえ、何でもないです。すみません、ワガママ言いました。」


そう言って私は斎藤先輩に背を向け歩き出す。
もう一度平助に相談しよう。
でも相談したところで絶望的な回答しか返ってこない確率が高すぎる。


斎「待ってくれ!名前!」


 「…はい?」


多分今なら植物とか枯れさせられるぐらいの負のオーラが出ていると思う。
そのせいか斎藤先輩が一瞬ギョッとしたけど後ろから腕を掴まれた。


斎「…屋上でもいいだろうか?」


 「え?」


斎「昼食だ。」


 「いいんですか?」


斎「ああ。」



相変わらずの無表情。
だけど…一緒にお昼食べてくれるんだ!


 「はい!チャイムが鳴ったら五秒で行きます!!!」


斎「…風紀委員が廊下を走るな。ゆっくりでいい。」


ふうと小さくため息をつき、ぽんぽんと私の頭を叩くと斎藤先輩は教室の方へ戻って行った。



やった!
斎藤先輩とご飯だー!!!

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