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すぐに斎藤さんの自室に戻ろうと私たちは足早に廊下を歩いた。
とりあえず部屋にこもっていればあっという間に時間は過ぎるだろうし…。


もう少しで部屋につく…といったところで。



原「名前。ちょっといいか?」


 「原田さん?」


後ろから原田さんに声をかけられた。
私が斎藤さんの方を見ると斎藤さんは頷く。
話してこいってことだよね。


 「どうしたんですか?」


原「俺の隊服、直してくれたろ?」


そういえば。
原田さんの隊服が破れていてそれを昨日縫っておいたんだ。


原「ありがとな。助かった。」


 「いえいえ、たいしたことじゃ…。」


原「これは礼だ。」


そう言って原田さんが渡してくれたのはお饅頭だった。二つある。


原「斎藤と一緒に食えよ。」


そう小さく耳打ちした。
原田さんは私が斎藤さんに片思いしている時から応援してくれてたんだよね。
嬉しいなあ。


 「ありがとうございます!原田さん!」


原「ああ。邪魔したな。」


私の頭をぽんぽんと撫でて原田さんは歩いていった。
私は斎藤さんの方を振り向くとお饅頭です!と笑顔で伝え…ようとしたのに。


 「斎藤さん?」


斎「…。」


無言の斎藤さんが私の手を掴むと部屋の襖を勢いよく開けて入る。


 「さ…斎藤さん!?」


斎藤さんが勢いよく襖を開けるなんて…。
パタンと大きな音を立てて襖を閉めると斎藤さんが無言のまま、無表情で私を見た。


 「あの…斎藤さん??」


斎「左之と何を話していたのだ?」


 「えっとー隊服直したお礼にお饅頭もらいました。…斎藤さんと二人で食べろって。」


おそるおそる伝えると斎藤さんの目が一瞬丸くなり…ため息をついて座り込んだ。


 「斎藤さん!?どうしました?どこか悪いところが…?まさか薬の副作用とか…。」


斎「違う。そうではなくて…。」


 「斎藤さん??」


斎「左之に…頭を…。」


 「え??」



俯きがちに言葉を紡ぐ斎藤さんは少し顔が赤くて。
しかもばつが悪そうな表情で。


頭撫でられたのが悪かったの?
でもお饅頭もらっただけなんだけどな…。


斎「そうか…左之は気を遣ってくれていたのか。なのに俺は…。」



そういえばさっきは沖田さんから逃げることばかり考えていて忘れていたけれど。
さっきも今も…斎藤さん、妬いてくれてる!?



 「もしかして…頭撫でられたの嫌でした?」


斎「ああ。」










自白剤万歳!








 「えっと…沖田さんの時もですけど…もしかして妬いてくれてたり…。」



斎「ああ。」








バンッと畳を思わず叩いた。
斎藤さんがびっくりしてどうしたと私に聞いてきたけどちょっと待ってください、それどころじゃないんです。


だって斎藤さんがヤキモチを…!
あの斎藤さんが!!!



畳でも叩かないとこの興奮が治まらない。



 「私、斎藤さんに妬いてもらえるなんて思ってもいなかったので…嬉しくて。」


斎「妬かれるのが嬉しいのか?男の嫉妬は見苦しいと思うのだが…。」


 「いいえ!嬉しいです!だって…好かれているのが伝わるじゃないですか。」


斎「そうか…。」


斎藤さんはそう呟くとゆっくりと私を引き寄せて抱きしめた。


 「斎藤さん?!」


斎「…もし、俺の言葉数が足りなくて不安にさせていたらすまない。」


 「い…いえ!それが斎藤さんの素敵なところでもあります!」


斎「好きだ。俺はあんたが一番大切で…。他の男と楽しそうに話しているとそれだけで苛立ってしまう。」



 (ま じ っ す か !!!)



斎「できることなら総司にも左之にも近づけたくはないのだが…。」


 「それは難しいですね。」


斎「ああ。」


 「でも私は斎藤さんしか見ていませんから。」


斎「…そうか。」


私がそう伝えると斎藤さんは私からゆっくりと離れて微笑んでくれた。


 「今日は斎藤さんの気持ちをたくさん聞けて嬉しかったです。」


斎「…変な薬を飲んでしまった。総司に何を言われるか考えたくもないな。」


 「ふふ。そうですね。あ、原田さんからもらったお饅頭食べましょうか。もう一度お茶を淹れてきますね。」


斎「ああ。頼む。」


私は斎藤さんの部屋を出てもう一度台所へ向かった。

斎藤さんの気持ちが聞けて嬉しくて。
顔のニヤニヤが止まらない。

だってね。


部屋に戻った時点で薬飲んでから三十分ぐらい過ぎてたんだもん。
つまり、薬の効力はもうなかったはずなんだ。


だから。


さっきの言葉はいつもの斎藤さんの言葉ってこと。


薬なんてなくても斎藤さんの気持ちが聞けたってこと。


さあこれを教えたら斎藤さんどんな顔をするのかな?
また顔を真っ赤にしてしまう斎藤さんを想像しながら、私は二人分のお茶を淹れるのだった。





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