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沖「どうしたの?名前ちゃん。顔が緩んでるよ。あ、いつもだったかな?」


台所の入口で沖田さんが立っていた。


 「沖田さん。今日も安定のドSっぷり、ありがとうございます。」


沖「ドSって意地悪な人って意味だったかな?」


 「人をいじめて喜ぶの人のことで…いひゃいいひゃい!」


びよーんと人のほっぺたを両手で伸ばす沖田さんはとても素敵な笑顔でした。


沖「ほんと楽しいや。こんなに伸びてお餅みたいだよ。」


 「失礼な!」


ばしっと沖田さんの手を叩くと沖田さんは笑いながら手を離す。
痛む頬を抑えながら沖田さんを睨んでやった。


 「…お茶、飲みます?」


沖「へえ、どういう風の吹きまわし?」


 「今は機嫌がいいので。」


ついでだし。
沖田さんの分のお茶も淹れてあげた。
私からお茶を受け取ると沖田さんは不思議そうに私を見ている。


沖「何かいいことあったの?…一君と。」


 「え!?あ…いえ、別に。」


なんか沖田さんに自白剤のことを気付かれるのはとてもよくない気がした。
そんなものの存在が知られたら犠牲者がたくさんでる。


絶対に!



沖「名前ちゃんって本当わかりやすいよね。何があったのかな?」


少しずつ私に近づいてくる沖田さん。
一歩一歩後ずさりする私。
壁に背がついてこれ以上下がれない状況になり、沖田さんが私の横に手をついた。


沖「ねえ、教えてよ。何隠してるの?」


 「い…言えません。」


沖「ふーん。」


そう言うと沖田さんは私の顎に手をかけ…。


ってええ!?顎?!


沖「じゃあ嫌でも言えるようにしてあげようか?」


な…何をするつもりですか?
まさか、顎割られるんですか!?
やめてーーー!それだけはやめてー!!!


沖「…もう少し違うこと考えられない?」


 「あれ?声にでてました?」


沖「早く言わないと、口づけするよ。」


 「…はあ!?」


顎割れるよりマシだけど駄目です!
わ…私には斎藤さんというお方が…。


沖「…やっぱりイライラするからその口塞いであげる。」


 「ええ!?また声にでてた!?ってちょっ…沖田さん!ストップ!!」


力の限り沖田さんの肩を掴んで押し返す。
だけどやっぱり力で敵うわけがなくてどんどん距離を詰められ…。



 「助けて!斎藤さん!!!」





斎「総司!」


目の前にいたはずの沖田さんが勢いよく横に吹っ飛んだ。
え!?まさか殴った?!…と思いましたがどうやら突き飛ばしただけらしい。


 「斎藤さん!」


斎「大丈夫か?名前。」


 「はい。」


ピンチの時に現れるなんて本当にヒーローだ。
かっこいいです…。


沖「ちょっと一君。僕が大丈夫じゃないんだけど。」


いててと言いながら沖田さんがゆっくり立ち上がる。


斎「あんたが名前の嫌がるようなことをするから…。」


沖「えー?ちょっとからかっただけじゃない。いつものことでしょ。」


 「いつものことって日常的なことにしないでくださいよ。」


沖「それにしても一君、僕と名前ちゃんが二人きりだったからもしかして妬いてるの?」


ニヤリと笑って沖田さんが言った。


…あ!


今質問しちゃったら…。



斎「そうだ。」


斎藤さんがそう言った瞬間、ハッと気付いたように口を手で覆う。
沖田さんは目を丸くしていた。


沖「…へえ。珍しいね、一君がそんな素直に言うなんて。名前ちゃんのこと大好きなんだねー。誰にもとられたくないのかな?」


 「あああ沖田さん!」


斎「とられたくない。」


沖「!…どうしちゃったの?一君…。」


 「さ…斎藤さん!行きましょう!」


斎「ああ。」


私は斎藤さんの腕を掴むと逃げるように台所を飛び出した。
これ以上あそこに居たら沖田さんに斎藤さんが質問攻めにあって羞恥心で死んでしまうと思う。

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