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テーブルに鍋をセットし、二人で椅子に座って手を合わせる。


主・斎「「いただきます。」」


いただきますをちゃんと言って食事をするようになったのは一緒に住みだしてからだった。
実家にいた頃はちゃんと言っていたけれど一人暮らしの時はつい言うことを忘れていた。
こうして二人揃って言うとなんだか家族になった気がして嬉しくなる。


斎「名前もバランスよく食べろ。野菜だけじゃなく、肉も豆腐も…。」


 「はーい。わかってますよ。」


ぐつぐつ煮えている鍋の具材を一さんが手際よくとってくれる。


 「今日はお仕事どうでした?」


斎「特にトラブルもなく順調だった。…が。」


 「?」


斎「総司が俺が早く帰ろうとするのをどうにか止めようとしてくる。」


 「沖田さんどうしたんですか?」



沖田さんは一さんと同じ会社の人で何度も会ったことがある。
一さんに負けないぐらいのイケメンだけど性格に難ありという一さんの言葉がぴったりの人だと思った。…良い人だけどね。



斎「わからん。飯に行こうだの飲みに行こうだの挙句の果てには合コンに来いだの…。」


 「ご…合コン!?」


斎「無論断った。行くわけがないだろう。」


 「ですよね。」


斎「俺には名前がいる。他の者に興味などない。」


さらりと言って一さんは野菜を口にしていた。
…恥ずかしいですよ、一さん。嬉しいけど。


まあ沖田さんも本気で合コンに誘っているとは思えないけど。
多分…それって。


 「沖田さん、寂しいんじゃないですか?」


斎「は?」


豆腐を食べようとしていた一さんの動きが止まる。
箸の上に乗っていた豆腐がお椀にもう一度ダイブする。


 「ただでさえ結婚してから一さん、沖田さんと遊びに行ったり、飲みに行く回数が減ったでしょう?私が妊娠してからはほとんどなくなったじゃないですか。だから…。」


斎「総司が?…ありえん。急いで帰りたい俺を邪魔するのが楽しいだけだ。」


う。
そう言われると楽しそうに一さんを妨害する沖田さんが簡単に想像できる。



 「で…ですが。たまには行ってきていいんですよ?」



斎「いや、俺は一刻も早く家に帰りたい。名前の顔が見た…。」


そこまで言ったところで一さんが言葉を詰まらせる。


 「はい?私の顔が??」


斎「い…いや、名前の体が心配なのだ。もしも急に体調が悪くなったらと思うと飲みになど行ってられん。」


 「大丈夫ですよ、まだまだ予定日まで四カ月もあるんですから。…あ。」


斎「どうした?」


 「なら、沖田さんをおうちに招待したらいいんです。みんなでご飯食べましょう?」


斎「…わかった。伝えておく。」


そう言って一さんは微笑んでくれた。


斎「名前は優しいのだな。」


 「え!?そんなことは…。」


斎「あの総司にも優しい態度をとれるあんたは仏のようだと土方さんも仰っていた。」


土方さん…私、仏なんですか。


 「では土方さんもご招待しますか?他にも何人か呼んでいただいて構いませんよ。賑やかで楽しそうですし。」


斎「ああ。他にも声をかけてみよう。ただし、準備は俺もする。一人で無理はするな。」


 「はーい。」


そう言って一さんはきっと冷めてしまったであろう豆腐を口にした。

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