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 「だから斎藤さん!飲みすぎですよ!?」


斎「大丈夫だ。問題ない。」


あれ、さっきも聞いたような気がする。デジャヴ?
でも問題あると思う。
だって斎藤さん、表情はあまりないけれど顔は赤いし目も潤んでるし。完全に酔ってると思うんだ。


沖「一君、好きな人いるんだけどね。気付いてもらえなくて悩んでるんだよ。」


 「ええ!?」


斎「総司!!!」


平「そうそう。相手が鈍すぎて伝わらねえんだよな。」


 「え?平助も知ってるの?」


原「と、いうよりみんな知ってるんだけど本人が気付かねえんだよ。よくある話だろ。」


 「ああ、確かに聞きますよね。そういう話。」


それは気の毒に。
なんなんだろうね。なんで本人って気付かないんだろうね。不思議だよ。


 「どんな人なんですか?」


斎藤さんの好きになる人ってどんな素敵な人なんだろう。気になってきた。


私が質問すると斎藤さんは少し困ったように目を泳がせる。さらに追加されたお酒を握りしめて一口飲むとふうとため息をついて答えてくれた。


斎「よく笑い、よく食べ、何事も楽しんでとりくめる奴だ。」


 「おお!なんだか子供みたいな人ですね。」


沖「っ…ほんとだね。」


何故か沖田さんが笑いをこらえてるけど。
まあいいか。


斎「時々食事に誘うのだがいつも誰かを連れてくるのだ。」


 「え?そうなんですか?」


二人きりは恥ずかしいのかな?
それとも大勢で食べるのが好きとか?
斎藤さんが嫌われるなんてことはありえないだろうし、緊張してるんだね、きっと。


 「緊張してるんですよ。斎藤さんと二人きりじゃドキドキしちゃいそうですもんね。」


原「どうだろうな…。」


原田さんが遠い目をしている。
そっか、みんな相手の人知ってるから想像してるんだ。



 「他には?見た目とかどうです?」


斎「見た目?…俺よりは背が低く、その…か…可愛らしいと…。」


平「へー。そう思ってたんだ〜。」


平助がニヤニヤしながらポテトを食べていた。
ちょっと、君一人でほとんど食べきったな?私の分も残しておいてよ。


一言答える度に恥ずかしいのか、斎藤さんはお酒を飲んでいる。これ、本当に飲みすぎじゃない?帰れる??


斎「だが、全く気付かん。鈍いとかいう問題ではなく、俺は嫌われているのではないかと思うほどだ。」


 「斎藤さんが嫌われるわけないじゃないですか。後輩の女の子達がきゃーきゃー騒いでますよ。自信持ってください!私も保証します!」


斎「…。」



沖「…あーあ。」


原「はあ…。」


平「どーんまい。」


 「え?え?」


次々とため息をはいていく周り。
わけがわからなくてみんなの顔を交互に見ているとコンッと音をたてて斎藤さんが空のグラスを置いた。
そして少しの沈黙。


 「あの、斎藤さん、帰れますか?お水頼みます??」


グラスを置いた状態で止まっていた斎藤さんの肩を叩き、覗き込むと小さく唇が動いた。



斎「…らぬ…。」


 「え?」



斎「あんたのことなどもう知らぬ!」


 「ええええ!?」



あれ!?
なんで!?
どうして!?

どうして斎藤さん泣いてるんですか!?!?
目がうるうるしたと思うと一粒涙が落ちていった。


沖「あーあ、泣かした。」


 「え!?わっ私!?」

思いが伝わらなくて悲しくなった…とかじゃないの?
でもそういえばあんたのことなどって言われた。え?私何かひどいことを…?


平「そりゃ泣きたくなるよな。好きな奴に自信もてとか言われてさ。」


原「馬鹿!平助!」


平「あ。」


 「え?」


沖「もういいんじゃない?一君が気の毒だから。」


え?
好きな…奴?
え?あれ?もしかして?


斎「あんたはどうしてそんなに鈍いのだ!?」

ぐいっと肩を掴まれ、至近距離で告げられる。
完全にスイッチが入った斎藤さんはぽろぽろ涙をこぼしているのにいつもの口調で続けた。


斎「俺が、食事に誘ってもいつも総司や平助がついてくる。」


 「それは…。」


みんなで飲みに行こうって意味かと思ってたんです。


斎「どこかへ行かないかと誘うのも、残業を手伝うのも、時々菓子やコーヒーを奢るのも。」


平「え?ずっりー。俺にも奢ってくれよ。」


ちょっと、平助変なちゃちゃ入れないで。
止めるなら完全に止めて。


斎「全部あんただけだ。あんた以外にしたこともしようと思ったこともない。」


 「えっとえっと…。」


掴まれた肩を揺すられ、頭がぐらぐらする。
やばい、酔う…。
いや、眠い?眠気がきた…??


斎「俺の理想は名前だ。どうすれば伝わるのだ?」


 「も…もう伝わりました…から…。あの…はなして…。」


斎「いや、あんたのことだ。きっとわかっていないだろう。俺が名前をどれほど好きか…。」


ぐいっと今度は肩を引き寄せられ顎に手の感触を感じると唇が温かくなった。
と、同時に視界に広がる綺麗な顔立ち。


原「なっ!」


平「ええ!」


沖「…。」


原田さんと平助の叫び声と、静かな沖田さん。
斎藤さんの唇の温もりを感じて私の意識はそこで一度途切れた。





何これ。
どんな告白?







数十分後、目を覚ました私は夢じゃないかと思ったのに。
沖田さんがいつの間にかとっていた動画を見せられ、キスシーンもしっかりと確認し。
隣の席で土方さん同様潰れている斎藤さんを見て、彼が起きたらどう接しようか必死に考えることになる。



とりあえず一言目は。
ふつつか者ですがよろしくお願いします…かな?





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