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 「あ、斎藤さんグラスあいてますよ。何頼みますか?」


斎「すまない。同じものを…。」


 「はーい。」


私は店員さんを呼びとめると追加注文をする。よし、私もとことん飲むか。


沖「で、名前ちゃんの理想はどうなの?」


 「え?私ですか?」


斎「げほっ!!!」


 「さっ斎藤さん、大丈夫ですか?」


飲んでいたお酒が気管にでも入ったのか斎藤さんが咳き込んだ。
背中をとんとんとさすってあげるとすま…ないとけほけほしながら少し涙目になっている。


原「おい、大丈夫か?斎藤。」


心配した口調なのに何故か原田さんは笑っている。隣の平助も同じ顔だ。


沖「ほら、理想は?」


 「えー…理想ねえ。理想なんてないですよ。好きになった人がタイプじゃないですか?」


平「へえ、名前ってそういう感じなんだ。背が高い人がいいとか、かっこいい人がいいとか言うと思ってた。」


 「私は平助と違って現実を見てるので。」


平「おい!」


原「それにしてももう少しこう…なんかあるだろ?じゃあ逆にどんな男は嫌なんだ?」


 「ええ?うーん、不誠実な人。」


沖「今僕のこと見なかった?」


 「まーさーかー。滅相もない。」


さっと頬を両手で隠す。
ふふふ。女子力は低くても学習能力は高いんですよ、沖田さん。


沖「僕みたいな誠実な人、どこを探してもみつからないよ?」


私の両手の上に重ねるように手をおくと、沖田さんはぎゅーっと挟むように押してきた。
ちょっ…唇がタコになる!
最強不細工になるからやめてくださいーーー!


 「ごめんなふぁい!」


斎「総司、やめろ。」


 「斎藤さーん!」


私を引き寄せるように引っ張り沖田さんの手から引きはがしてくれた斎藤さん。
ああ、誠実な人っていうのはこういう人のことを言うんだよね神様。


沖「ん?一君顔が赤いけど飲みすぎ?」


 「え?大丈夫ですか?」


確かに顔が赤い気がする。
そっと頬に触れるとぴくりと目元をひきつらせて少しうるんだ瞳で私を見ていた。
さっきむせたのをひきずっているのかな。


斎「も…問題ない。」


 「ならいいんですけど。」


平「問題しかねえよな。」


 「え?」


平「いや、何も。」


平助のため息とほぼ同時に斎藤さんがグラスのお酒を飲みほした。


 「さっ斎藤さん!大丈夫なんですか?本当に。」


斎「いつもこれぐらい飲んでいる。」


 「それはそうですけど…ペースがはやくないですか?」


沖「いいんじゃない?飲みたい気分なんだよ。じゃあ一君は?理想。」


斎藤さんの理想。
そりゃあ良妻賢母的な人でしょう。
なんとなく綺麗で家庭的な人のイメージ。
あ、でもばりばりキャリアウーマンっていうのも似合うな。
まあ斎藤さんなら素敵な女性はよってくるだろうから美男美女カップルが誕生するんだろうな。



斎「俺は…。」


じっと見つめていると視線がぶつかる。
斎藤さんは一瞬固まったがそのまま唇を動かした。


斎「明るくてよく笑っているような人がいい。」


運ばれてきたお酒を持ち、水面に視線を落としてそう呟いた。


斎藤さん!謙虚!
あなたなら美人でナイスバディの才女とか言ってもバチは当たりませんよ!!


 「斎藤さん…斎藤さんって女子に優しい人ですね。斎藤さんみたいなイケメンがそんなこと。全国の乙女が自信もてます。」


沖「別に誰でも良いって言ってるわけじゃないけどね。」


 「だけど明るくするとか笑顔になるとか努力できるじゃないですかー。体型とか顔立ちはどうしようもないこともたくさんあるんですよ。」


ぐびぐびとビールを飲みながら愚痴ってしまう。だってそうじゃない?


原「笑顔はいいよな。こっちも元気になるからな。」


平「まあ確かに。いつも笑ってるっていうのはいいかもな。」


 「でも斎藤さんみたいな人に好かれる人は幸せ者ですね。斎藤さん好きな人いないんですか?」


目の前の浅漬けに手をのばす。
パリパリと音をたててキュウリが私の体に取り込まれ…あれ?何で静かなの?


顔をあげると半眼の平助。
その左に苦笑いの原田さん。
右の土方さんは…あ、ご愁傷さまでしたね。
ぐぐっと首を左に動かせば沖田さんが楽しそうにビールを飲んでいて。


斎藤さんはまたお酒を一気飲みしていた。

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