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鴨川沿いを二人で歩く。
土手には花が咲いていて名前ちゃんが綺麗と喜んだ。


「総司君!」

「ん?」


名前ちゃんは花を摘んで僕の方を向いた。


「今日はありがとう!最高の誕生日!」


その時の笑顔。
やっぱり一人占めして良かったって思ったんだ。この笑顔は他の人に絶対見せたくないから。


僕は少しずつ花を摘んでいる名前ちゃんの所へ近づいた。


「総司君の誕生日って夏だよね?その時は私がお祝いするね!」


ねえ、何が欲しい?なんて聞かないで。
僕が欲しいのは一つだけ。


「総司君、プレゼント何が欲しい?」


ああ、やっぱり。
君なら聞くと思ったんだ。


「君。」

「え?」

「名前ちゃんが欲しい。」


そう言って僕は名前ちゃんを抱きしめた。まだ誕生日でもなんでもないけどしょうがないじゃない。抑えられないんだから。


「そ…総司君。」

「名前ちゃん。僕は君が好きだよ。」


聞こえるのは川のせせらぎと鳥の声。
そして腕の中にいる君の心音。
僕と同じ速度で刻むそれに心地よくなる。


「僕は君と一緒にいられればそれだけで幸せだよ。ねえ名前ちゃん。君は?」

「幸せ…だよ?」

「本当に?」

「うん。だって私も総司君が…好きだから。」


耳まで赤くした君が、今度は真っすぐに僕を見て言葉を紡いでくれる。
君の誕生日だというのに、僕の方がとんでもない贈り物をもらったみたいだ。


「大好きだよ。名前ちゃん。」







「私も。総司君。」


名前ちゃんの額に口づけを落として僕はゆっくりと離れた。
多分僕の顔も少し赤いと思う。



「そろそろ戻ろうか?」

「うん!本当にありがとう!総司君。」


今度はどちらからともなく手を繋ぎ、僕達は屯所までゆっくりと歩いていった。
甘くあたたかい空気に包まれている気がして、僕は本当に幸せだった。



屯所まで後少しといったところで僕は名前ちゃんにお願いをする。
だってこのまま帰ったら大変なのは目に見える。怖い顔した人達が立って待ってそうだし?


「ねえ名前ちゃん。一つお願いがあるんだけど。」

「なーに?総司君。」

「怖い顔した人達が立ってたらさ、すっごく楽しかったって笑って言ってくれる?」

「…何したの。総司君。」

「内緒だよ。でも今日の誕生日の祝い方はみんなで考えたからね。」


そんな会話をしながら屯所の玄関へ向かうと案の定というかなんというか。



「総司…てめえ。」

「ひでえよ!総司!」

「ったく…まんまと騙されたな。」

「総司…俺達に薬を盛ったな。」


ほら、怖い顔した人達がやっぱり立っている。
今にも刀に手をかけそうな勢いの四人の前に名前ちゃんが立った。


「ただいま…。あ、あの!」


「「「「?」」」」


「すっごく楽しかった!ありがとう!」


僕が一人占めしたいと思ってる笑顔で彼女はみんなにお礼を言った。


…ほらね。やっぱり。
その笑顔には誰も敵わない。


「あー…なんだ。その、楽しかったなら良かったな。」

「あ…ああ。名前が楽しいのが一番だし。」

「何かいいもん買ってもらったか?」

「あんたの笑った顔を見れば楽しかったことが良く分かるな。」


一気に空気が和んでしまうんだから本当にすごいと思う。


「あ!お帰りなさい!ご馳走、用意してますよ!広間に行きましょう。」


丁度通りがかった千鶴ちゃんが僕達にそう言って。
みんなで顔を見合わせるとそのまま広間へ向かった。


本当だったら夜も僕だけがお祝いしたいところだけど…これから毎日彼女の隣は僕のものなんだし。


今日ぐらいはみんなで祝うのを許してあげる。



「おめでとう!名前ちゃん。」

嬉しそうに笑う千鶴ちゃん。

「おめでとー!いっぱい飲もうぜ!」

同じように笑って杯を掲げて笑う平助君。

「おめでとう。今日はお前も飲めよ。」

名前ちゃんにお酒を注いであげる左之さん。

「あまり飲ませ過ぎんなよ。…おめでとう。」

素直に祝えない土方さん。

「こういうのもいいものだな。名前、おめでとう。」

ふわりと微笑む一君。

「おめでとう、名前ちゃん。」

みんなが幸せなのはきっと君がいるから。

――愛してるよ。



最後の言葉だけは、君だけに聞こえるように耳元で囁いた。
すると君は幸せそうに微笑んでくれる。


これからもこの気持ちを君に伝え続けるから。
ずっと傍にいてください。






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