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「甘い物食べたいの?」

「名前ちゃんに食べてほしいんだよ。…≪けーき≫ってやつは手に入らないけどさ。」

「総司君!もしかして…。」


名前ちゃんはやっと気付いたみたい。
僕が誕生日を祝おうとしてること。


「いいって。悪いし…。」

「へえ…お店に入ったのに何も頼まないとかできるの?君って僕に恥かかせる気?」

「そそそそんなことは!」

「あはは。じゃあ何か頼んでよ。僕も何か食べたいし。」

「うん…ありがとう。」


ああもうずるい。
僕が無理やり連れてきてるのにそんな可愛い顔でお礼を言うなんてさ。


これじゃ僕が得してるじゃない。


名前ちゃんが少し遠慮がちにお団子を頼むとすぐに店主が持ってきてくれた。
餡とみたらしが二本ずつ。


「はい、名前ちゃん。」

「え?」

「ほら、口開いてよ。餡が落ちるよ。」

「え?え?むっ…。」


僕は名前ちゃんの小さな口にお団子を少し強引に入れた。必死に食べてる名前ちゃんが小動物みたいで可愛い。


「おいしい?」

「は…恥ずかしくて味がわかりません!」

「えー?じゃあもう一個食べさせてあげるよ。」

「じじじじ自分でやるから!」


やっぱりからかうとおもしろいよね、名前ちゃんは。すぐ赤くなるし、慌てるし。こんな姿、他の人に見せたくないじゃない。


その後も僕は名前ちゃんを散々からかいながら団子を食べた。
食べ終わるとまた彼女の手をひいて町を歩きだす。


「総司君、他にもどこか行くの?」

「うん。次はね、≪ぷれぜんと≫。」

「ええ!?そんないいって。」

「僕があげたいんだけど?」

「う…。」

「何がほしい?簪?紅?」

「え!?うーん…。」


名前ちゃんが目を閉じて考え込んでいる。そんな表情も可愛いななんて思って見ているとぱちりと大きな目が開いた。


「髪紐!」

「髪紐?」

「うん!総司君の髪紐がいい!」

「え?僕の?」

「そうしたらいつも一緒にいられる気が………。」

「名前ちゃん?」


口を開いたまま、名前ちゃんが固まった。そのままじっと見ているとみるみる顔が赤くなっていく。


「あ、ちが、その!ごめんなさい!忘れて…。」


ねえ、そんなこと言われたら。
僕、期待していいよね?


僕は自分の髪を結んでいた髪紐を解くと名前ちゃんの髪を結んだ。


「これでいいの?」

「…うん。」


相変わらず真っ赤な顔して、目も合わせてくれないけど、僕の顔は緩みっぱなしだよ。


「じゃあ次は歌だね。」

「え?歌?総司君わかるの?」

「未来の歌はわからないからこれあげる。」

「…これ、土方さんの。」


豊玉発句集を渡された名前ちゃんの顔。後で土方さんに教えてあげよう。


「よし、じゃあ今度はこっち。」

「どこに…?」

「いろいろ。」


そう言って僕は名前ちゃんの手をひいた。



その後はしばらく二人で町を歩いて、小間物屋を覗いたり、途中神社で休憩をしたり、たわいもないことを話していたらあっという間に時間は流れていった。

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