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名前ちゃんの誕生日当日。

朝餉の後に僕の部屋へ集まることになっていた。

僕は部屋へ向かう前に千鶴ちゃんを呼びとめた。名前ちゃんの誕生日の話をするとやっぱり千鶴ちゃんは夜にご馳走を準備するつもりでいたらしい。
みんなでお祝いしましょうねと言われて僕は頷く。そしてそのまま一つだけ頼みごとをした。


「ねえ、千鶴ちゃん。この後五人で名前ちゃんのお祝いの準備するんだ。僕の部屋に集まるからお茶持ってきてもらえる?」

「いいですよ。」


やっぱり千鶴ちゃんは良い子だよね。
頼んだらすぐにやってくれるから。
僕は口角が上がってしまうのを抑えることもせず自分の部屋へと戻って行った。



自分の部屋から声が聞こえる。
どうやら四人は先に入っているらしい。


「みんなはやいね。」

「総司遅いってー。とりあえず俺と左之さんが甘味担当でいいの?」

「俺は簪を買いに行く。副長は…。」

「詠まねえぞ。歌は詠まねえからな。斎藤、紅も買ってきてやれ。俺がだす。」

「御意。」


相変わらず人のことを無視して話が進むもんだから僕は襖の所に立ったまま耳を澄ましていた。
廊下から足音が聞こえる。
僕は廊下へ出ると千鶴ちゃんの前に立った。


「あ、沖田さん。お茶持ってきましたよ。」

「ありがとう。千鶴ちゃん。じゃあご飯の準備よろしくね?」

「はい!」


千鶴ちゃんからお茶を受け取ると僕は部屋に入る…前にこっそりとお茶に粉薬を入れた。


「山南さんに貰ってたんだよね。」


そのまま再び自分の部屋へ入ってみんなの前にお茶を置く。


「千鶴ちゃんが淹れてくれましたよ。」

「さっすが千鶴!」

「気がきくな。」


みんなの手がお茶へ伸びたのを見て僕は心から微笑んだと思う。
だって、そのお茶には…。



「…おい、このお茶…。」

「な…にか…入って…。」

「うーん…眠い。」

「まさか…これは…。」


バタバタと畳の上に転がるみんなを見て僕はすっと立ち上がった。


「みんな疲れてるでしょ?ゆっくり休みなよ。」


山南さん特製の眠り薬。前になかなか寝付けないと言った時に作ってくれたんだよね。
けっこう強烈だと思う。


「名前ちゃんのことは僕にまかせてね。」





そう言い残して僕は自分の部屋を出ていった。
もちろん、愛しの君を探しに。










「あ。名前ちゃん!!」

「総司君。今日はお休み?」

「うん。」


名前ちゃんは暇だったのか、壬生寺の境内で近所の子供達と遊んでいた。
僕が姿を見せると子供達が近くによってきたんだけどごめんね、今日はそれどころじゃない。


「ねえ名前ちゃん。今日は僕に付き合ってよ。」

「え?いいけど…。」

「あー二人が逢引きするぞ。」

「いいねー。逢引きー!」

周りの子供たちがからかうように名前ちゃんに話しかける。

「ちょ…逢引きって!」

「うらやましいでしょ?お姉ちゃんかりていくね。」

「総司君!?」


僕は名前ちゃんの手を掴んで歩き出した。慌てたような声がしてきたけどそんなのは無視して僕は町へと歩きだす。


 「どこにいくの??」


僕が手を離さないと諦めたのか、名前ちゃんは隣に並んで歩くと僕に聞いてきた。


「まずはね。」

ここだよと僕はよく行く甘味屋さんを指さした。

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