「な…なんだよ…総司。」
「何でそんなに怯えてるのさ、平助。」
「だって…。」
この怯えよう、失礼だと思わない?
僕と同じく昼の巡察から戻ってきた平助を彼の部屋の前で捕まえたのが五分前。
その時は普通にどうした総司?話があるなら入れば?とか笑って言ってたのにさ。
今は顔をひきつらせて僕を見ている。
「だって、何?」
「だって総司が俺にお願いがあるとか教えてほしいことがあるとか言うからだろー!!!怖えって!何企んでるんだよ!俺土方さんにイタズラするとか嫌だからなあああ!」
本当に失礼だよ、平助。
僕の考えることは土方さんへの嫌がらせだけじゃないんだけど。
「違うよ、そんなことじゃなくて…。」
「俺、それだけは加担しないからな!給金なしとか島原禁止とか無理だもん!」
言いながら立ち上がった平助が僕の横をすりぬけて部屋を出ようとした…のを止めた。
…足首を掴んで。
「うわっ!」
![](http://static.nanos.jp/upload/k/kuuhei/mtr/0/0/20141101220903.jpg)
襖があいていたおかげ?でベタっと廊下の方へ転んだ平助君をさらに上から抑え込む。
「ちょっと、まだ話の途中なんだけどー。」
「いてててて!いてえよ総司!…あ!左之さん!一君!助けてーーー!!!」
平助の腕をひねりあげていた時にちょうど左之さんと一君が廊下を通り過ぎるところだった。
平助の叫び声に二人が気付いて歩いてくる。
…叫んでるっていうのにゆっくり歩いてくるところが二人らしいよね。
「何やってんだよ、お前ら。」
「平助、何かしたのか。」
「してねえよ!総司がいきなり!!」
「僕は聞きたいことがあるから教えてほしいってお願いしただけだよ。なのに平助が逃げるから。」
「総司がお願いするとか絶対おかしいじゃん!何かよくないことに決まってる!!」
「…ご挨拶だね、平助君。」
「おいおい、総司。とりあえずどいてやれ。」
「ああ。人に物を頼む態度ではない。」
僕は渋々平助からどくとものすごい速さで彼は左之さんの後ろに隠れた。
その様子に一君が小さくため息をつくと僕の方を向いて問いかける。
「で、総司は何を聞きたかったのだ。」
「誕生日。」
「「「は?」」」
「明日、名前ちゃんが誕生日なんだ。で、何をすればいいのかなって思って。平助は前に名前ちゃんから誕生日について話を聞いてたからその時のことを教えてもらおうと思って。」
僕が話しているのを三人は目を丸くして聞いていた。
ねえ、僕がこんなことを聞くのはそんなに珍しいわけ?
「…総司がそんなことを言うとはな。」
「そうか、明日は名前の誕生日なのか。」
「あ、それで俺に聞いてきたのか。」
「そうだよ。なのに平助が逃げようとするから…。」
「へへっ。悪い悪い。」
そんな風に笑ったってごまかされないよ、平助。でも何故か僕だけじゃなくて一君や左之さんまで誕生日について聞こうとしてるから僕達は廊下で座り込んで平助の話を聞くことになった。
「まずはー!」
「お前らそんなとこで何やってやがる。」
「…土方さん。空気よんでくださいよ、よめないなら空気のように消えてくださいよ。」
「何でいきなりそんなこと言われなきゃならねえんだ!!!」
だってやっと平助が話をしてくれる…って時にたまたま土方さんが通りがかるなんてさ。
名前ちゃん達の時代で言えば≪たいみんぐ≫ってやつが悪いっていうんじゃないの?
「総司が名前の誕生日について聞きたいっていうからさー。」
「ああ?誕生日だ?」
「明日名前が誕生日なんだとよ。」
「未来では祝いをする…と前に聞いてます。」
「どういうことをするのか、平助と千鶴ちゃんしか聞いてなかったから教えてもらおうと思ったんですよ。」
「…何するんだ。」
ちょっと、なんで土方さんまで聞こうとしてるの?
そういえば一君も左之さんも聞く気満々だし…ねえ、これってさ。
もしかしなくても…みんなお祝いする気なの?
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