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―祝えいぷりるふーる ドッキリ大成功―


なんて書いてあるかわからないが、名前が嬉しそうにそう書かれた紙を掲げている。


困った顔をしている千鶴。


笑いをこらえきれなくて口を押さえている新八と平助、原田。


下を向いているが明らかに笑いを我慢している斎藤と山崎。肩が震えている。


そして。


かめらを片手に満足した表情の総司がいた。




平「げ・・限界!!!!」


新「あはははははは、腹がいてぇ!」


原「土方さん、見事に全部だまされたな。」


千「ご・・ごめんなさい、土方さん!」



皆、次々に吹きだす。
どうやら目隠しされている間から侵入していたらしい。
音も立てずに我慢していたようだ。


沖「これってやっぱり僕と一君組が一番だませたと思わない?」


 「えー!私と左之さんだって良かったよね?」


原「あぁ、最後「責任とるか」って言わせたもんな。」


平「ちょっとちょっと!俺と山崎君だって良かっただろ?思い切りだまされてたじゃん!」


 「確かに。忍者なんですとかってけっこう冗談な感じに言ったのにね。」


沖「本当に間者だったらそんな宣言しないで逃げるよね。」


平「だろー。」







目の前の盛り上がりについていけない。

つまり・・?

だまされた?







土「・・・・・。説明しろ。」



 「実はですね。」



名前が説明を始めた。











〜一週間前〜 


 「あー。もう三月も終わりか。」


いつも通り、広間で朝餉をとっている時に名前が呟いた。


千「そうですね。暖かくなってきましたね。」


 「四月と言えば四月ばか!エイプリルフールじゃないか!!!」




 「「えいぷりるふーる?」」



広間にいた幹部達が声をそろえた。



 (皆きょとんとして可愛い・・)



 「エイプリルは四月、フールは愚か者って意味でね。未来の日の本では四月一日に嘘をつくイベントがあるんだよ。」


平「嘘をつくいべんと?」


 「いろんな嘘をついてだますんだよ。」


原「おいおい、未来はすげぇことやるんだな。」


 「そんな命にかかわる嘘じゃないよ。可愛い嘘がほとんどだし、みんな知ってることだからさ。」


沖「じゃあ僕たちもやろうよ。えいぷりるふーる。嘘ついてだませれば勝ちなんでしょ?」


 「勝ち負けではないんだけど・・まぁね。」


斎「どうやってやるつもりだ。」


沖「ん?」


斎「ここにいる皆がえいぷりるふーるについて知っている。嘘をつかれることをわかっていてだまされる奴はいない。」


新「確かに。聞いちまったらだまされねぇな。」


近「残念だったなぁ。」


会話を聞いていた近藤さんと山南さんが笑いながらお茶を飲んでいた。どうやら二人もばっちり話を聞いていたらしい。


沖「何言ってるのみんな。いるじゃない。」



 「「「え?」」」



総司が指をさした先にはいつもいるべき人物がいなかった。


沖「ここんとこずっと部屋にひきこもりの人が。」


千「沖田さん、それはさすがに・・。」


沖「誰が一番土方さんをだませるか勝負しようよ。」


斎「総司。副長は日々、我々以上に仕事をされている。だますなどふざけたことを・・。」


沖「一君は土方さんが心配じゃないの?」


斎「何?」


総司の発言に斎藤の目が細くなる。


沖「ご飯もろくに食べないでずーーっと部屋にとじこもってる土方さんが。だますでもなんでも外につれだしてあげて気分転換させたほうがよくない?」


斎「・・・。」



 (一君まるめこまれた!!!)



千「あの・・私は・・無理です。」


素直な千鶴に人をだますなど、ましてやあの鬼の副長をだますなんて何年たっても無理そうなのは明らかだ。

しかし総司はあきらめない。


沖「千鶴ちゃんも参加しなきゃ。でもまぁ、君一人は無理だろうから・・あ、二人で一組にしようか。名前ちゃん、どう?」



 「よっしゃ!クジ作るぞ!!あ。近藤さん、山南さん!・・・・コソコソコソコソ。」


名前が近藤と山南に耳打ちをすると二人は微笑んだ。




 「んでもって一番うまくだませた組には・・」




―コ○ラのマーチ―



 「私と一緒にトリップしてきたこの子をあげるぜ!!!!!」



未来のお菓子は大人気でした。
前に封を開けたアーモンドチョコレートは一瞬で消えました☆























 「てなわけです。土方さん。」


土「それで揃いも揃って俺をだましにきたわけか?」


沖「そうです。ねぇ、土方さん、誰の嘘が一番良かったですか?僕と一君ですよねー?」


平「えー俺達も良かったって!」


沖「だってさ、土方さんに好きっていうとか、すごいがんばったと思わない?気持ち悪すぎてはきそうなんだけど。」


新「ぶっ・・くくく。確かに相当気持ち悪い。」


沖「でしょー?その努力認めてほしい。」


原「でもなぁ。斎藤がこらえきれずに咳き込んだよな?名前?」


 「そうそう!一君が咳き込んだから減点ー!」


みんなで騒いでいたが千鶴が声をあげた。


千「み・・みなさん!」


沖「何?千鶴ちゃん。千鶴ちゃんと新八さんは無難なとこしかしてないから一番にはなれないよ。」


千「そ・・そうではなくて。」






―――ブチッ

――――チャキッ







目の前に。
腕の縄がほどけた状態の鬼がいた。
さらに腰の刀に手をかけている。





 「・や・・山崎君、平助。私、敵を縛るつもりでやれっていったよね?」


山「・・・・・。そのつもりでした。」


平「俺も。本気だったけど・・。」


沖「鬼の本領発揮じゃないですかー?」


飄々と発言する総司はすでに廊下にでていた。
斎藤も同じだ。
そのまま走り去る。



―――ブチン


刀でたやすく足の縄を切った。




土「てめぇら。」



原「土方さん・・落ち着けって。」


新「そうそう!これ、そういういべんとってやつだから!な、名前ちゃん。」


 「そそそそそうですよ!土方さん。」


ゆっくり立ち上がる鬼副長を前に後ずさる幹部達。
気がつけば山崎君の姿もなかった。


平「ちょっと!計画狂う!」


 「そんなこと言ってる場合!?」







口についていた紅をゆっくりとぬぐう。
少し残っている赤がまるで・・
血のようで。






土「全員、死ぬ覚悟できてんだろうな?」





抜刀。











――鬼、降臨。












 「「「ぎゃぁぁぁぁああああ!!!」」」






命がけの鬼ごっこがはじまった。

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