私が説明をしようとした時。
ふすまが開いた。
千「失礼します。あ、目を覚ましたんですね!」
沖「良かったね、一君。一君が押しつぶして女の子が死んじゃったなんてなったら、笑えないよね。」
平「痛いとこないか?水、持ってきたぜ。」
原「良かったな、斎藤。目覚ましてくれて。こんな別嬪に傷つけたら大変なところだったぞ。」
新「そうだそうだ!くそーなんで俺に別嬪ふってこねぇんだ!!」
平「新ぱっつぁん、別嬪がふってきたんじゃなくて、一君が降ってきたんだよ。」
新「・・それは遠慮する。」
幹部勢ぞろい☆
本当になんで私は携帯持ってないの・・。
夢なのはわかってるけどさ。
もったいなさすぎる!
焼きつけろ!私!!!この目にしかと焼きつけろ!!!!!
斎「・・・静かにしてくれ。目を覚ましたばかりだ。」
「あ、大丈夫です。」
沖「君、なんて名前なの?」
沖田さん!
刀ぬいて「殺すよ」って言ってみてください!
斎「名前だ。」
沖「なんで一君がこたえるのさ。彼女に聞いたんだけど。」
斎「う・・。」
千「良かった。名前さんが運ばれてきたときびっくりしてしまいました。」
可愛いよ千鶴ちゃん。
きっと君が着替えさせてくれたんだよね、ありがとう。
平「でも大丈夫そうだな。俺非番だし、家まで連れてってやるぜ?」
新「な、平助抜け駆けは禁止だぞ!」
平「だって新ぱっつぁんはこれから巡察だろー?残念だったなぁ。」
斎「俺が送る。」
原「珍しいな斎藤。お前がそんなこと言い出すなんて。」
沖「もしかして一君。この子のこと・・。」
斎「お・・俺のせいでこんなことになったんだ。送り届けるのは当たり前だろう!」
平「一君が向きになるとか珍しい・・。」
ぽんぽん紡がれる会話についていくのがやっとで。
何も言えずにいたけれどなんか珍しい斎藤さんが見られている??
斎「名前、立てるか?」
斎藤さんが私の腕をとって立ちあがらせてくれた。
ちょ・・斎藤さんに触っちゃったよ!
「あの・・?」
斎「送る。」
そう言うと斎藤さんは私の腕を掴んだまま、ふすま付近にいた皆さんを押しのけてずんずん歩きだした。
「「「いってらっしゃーい。」」」
千鶴ちゃん以外の皆さんは顔が完全ににやけてます。
何この展開。
屯所の外に出て京都の町を歩く。
何度か京都には来たことあるけれど、やっぱり私の時代とは違う。
電線もないし。高い建物ないし。
歩いている人もお店も何もかもが違う。
斎藤さんは無言で歩き続ける。
どこに・・むかってるんですか?
「あの・・。」
斎「!す・・すまない!」
斎藤さんは我に返ったのか足を止め、手をぱっと放した。残念。
斎「あんたの家を聞いていなかったな。」
「それが実は・・。」
どう言おうか迷っていた時。
――グ〜〜
な ん で こ の タ イ ミ ン グ?
私のお腹が悲鳴をあげた。
そういえば朝軽く食べただけだ。まだお昼ご飯食べてない。
でもそれにしたって。
よりにもよって斎藤さんの前で!?
斎「ふっ・・。」
「わ!笑っちゃだめです!」
斎「何か食べるか?」
「いえそんな・・。」
お金ないし。
斎「団子ぐらいご馳走させてくれ。」
そう言うと斎藤さんは近くのお団子屋さんに連れて行ってくれた。
お店の人がお茶とお団子を持ってきてくれる。
「おいしそう!いただきまーす。」
お腹がすいた今、何よりもおいしく感じる。
ってか、今までで食べたお団子で一番おいしいかも!
だって斎藤さんと食べてるんだもん。
斎「うまそうに食べるな、あんたは。」
「だっておいしいです。斎藤さんと一緒だから。」
斎「な・・//」
あ、しまった。つい言ってしまった。
でもいっか。本当のことだし。
夢だもん。
赤くなっている斎藤さん本当に可愛い。
斎「・・変わっているな。」
「そうですか?」
斎「食べたら行くが、あんたの家は遠いのか?」
どうしよう。
どう言おうかな。
家はあるけどここにはないとか。
意味わかんないよね。
何と言っていいかわからず、下を向いて考えていると斎藤さんが口を開く。
斎「何か・・困っているのか?」
「まぁ・・その・・。」
斎「俺でよければ力になるが・・。」
「あの、家には一人で帰ります。だから・・。」
斎「?」
「今日一日、斎藤さんの時間をください!」
斎「俺の時間?」
「私、今日誕生日なんです!だから、斎藤さんと一緒にいたい!」
夢をいいことにだいぶ大胆なこと言ってるよ私。でも今ここで目が覚めたら後悔するし、どうせ夢ならいろいろやらなきゃ!
斎「誕生日?」
あ、この時代って誕生日お祝いしないんだっけ。みんな一斉に年とるんだよね、元旦に。
「わ・・私の住んでいるところでは誕生日を祝う習慣がありまして・・誕生日の人をおいしいものを食べてお祝いしたり、贈り物をしたりするんです。」
斎「そうなのか。」
「ハッピーバースデーって言ってお祝いするんですよ。」
斎「はっぴー?」
可愛い・・。
もう一度きょとんとした顔で言ってください・・。
「ハッピーバースデー。お誕生日おめでとうって意味ですよ。」
斎藤さんは練習するようにハッピーバースデーと繰り返し呟く。
もう、そんな姿にもキュンキュンします。
斎「では・・どこへいく?」
「町を歩いて、いろんなところを見たいです。」
斎「俺もそんなに詳しいわけではないが、いいか?」
「はい!」
私は差し出された斎藤さんの手を掴んで歩きだした。
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