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まじまじと広がる世界を見つめる。

歩いている人はみんな着物で。

どこを見ても高い建物なんてない。


 「何これ・・。」


まるで。


ゲームの中に入ったみたい。




少し歩いてみる。

周りの人の視線が痛い。

そりゃそうか。私変な格好だもん。


しばらく歩いていると悲鳴が聞こえた。

建物の周りに人だかりができている。



 「何なに?」


おそるおそる近づいてみると。


 「新撰組だーーー!!」



え?新撰組?



何人か建物から逃げ出す人々がいた。
これって・・捕縛の瞬間??
逃げる人々をダンダラ模様が追いかけている。


まさか・・斎藤さんも!?


そんなことを考えていた時だった。



 「っ・・どいてくれ!」



頭上から声がした。

声のほうへ顔を向ける。








流れるような黒髪。



深い海のような紺碧の瞳。



その表情は少し驚いているようで。



全ての景色がスローモーションに見えるときがあるって聞くけど。

まさにそれ。
だって。

斎藤さんが降ってきたから。

本当に。

本当に斎藤さんが。

ゆっくりと私のほうへ。


斎「あぶな・・。」


斎藤さんの声を聞いた瞬間。
スローモーションは終わった。
世界は周りだす。

つまり。


 「!?」

私に斎藤さんを受け止められる力も、途端によける反射神経もなく。


ぶつかると思ったら景色は真っ暗になった。







そこからずっと真っ暗。
遠くに斎藤さんの声が聞こえる気がした。

他にも。
沖田さんとか、原田さんとか。


あぁ、これ夢か。
ゲームしながらいつの間にか寝たんだ。
だからこの声もゲームから流れてくる声が耳に響いているだけで。


目を開けたら。
ベッドに寝てるんだ、きっと。


でも。
幸せな夢!
さすが誕生日。神様も夢の中で斎藤さんに会わせてくれるとは粋なことを・・。
あーでもお話してみたかったなぁ。


あ・・。目覚める。
瞼の裏が明るいもん。


 「ん・・。」


ゆっくりと目を開けるとそこには見慣れない天井があった。

あれ?ここどこ?

きょろきょろと目を動かす。


 「目が覚めたか。」


 「え?」


ふすまをあけて入ってきたのは。


 「さ・・さささささ・・。」


斎藤さん!!!!!


斎「・・大丈夫か?」


斎藤さんが心配そうにこっちを見てくる。
抱きつきますか? YES! →NO・・


 「が・・我慢しろ、私。」


斎「どうした?どこか痛むのか?我慢するな、今薬を持って・・。」


 「ち・・違います!大丈夫ですから。」


斎「そうか?何にでもきく薬が・・。」


 「石田散薬は・・けっこうです。」


斎「何故知って・・。」


 「わぁぁ!生〈何故〉!これはもう・・神様ありがとうございます・・。」


斎藤さんにかぶせて叫んでしまった。
だってこんなの。
斎藤さん好きにはたまらないじゃないですか。


斎藤さんが心配というよりは怪訝な表情になってきたので私は慌てて居住まいを正した。


斎「先ほどはすまなかった。」


 「先ほど?」


斎「俺の不注意だ。誰もいないところに飛び降りたつもりだったが・・不逞浪士を捕縛することに夢中になっていたようだ。」


あ、そうだったんだ。
斎藤さん二階から飛び降りてきたの!?
なんという運動神経。


斎「そしてあんたにぶつかってしまった。本当にすまない。」


本当に申し訳なさそうに謝る斎藤さんに・・。








キュンとしてしまった。









だっ・・だって捨てられた子犬にしか見えないですから!




 「大丈夫ですから!私この通り元気で・・。あれ?」



私、こんな服着てた?
サイズはちょうどいいけど、着物なんですけど。




 「これ・・。」



袴をつまむようにして斎藤さんに聞くとあぁと呟いてこたえてくれる。



斎「俺とぶつかって転んだときにあんたの着物は汚れてしまったから洗っておいた。しばらくすれば乾くだろう。」



 「え?あの・・誰が着替えを・・。」


すると斎藤さんの顔が赤くなる。
え?まさか違いますよね。
それもおいしいけど、さすがに恥ずかしすぎる!



斎「いや・・ち・・違う。俺ではない!ちゃんと別の者に・・。」



わかってます。斎藤さん。
斎藤さんそんなことできないですもんね。
だからそんな赤い顔して慌てないでください。私をキュン死にさせるつもりですか?



 「あの、運んでくれてありがとうございました。」


私はお辞儀をする。
きっとここまで連れてきてくれたのは斎藤さんだ。捕縛中の大変な時だっただろうに。



斎「いや、もとはといえば俺の責任だ。あんたに何の非もない。俺は斎藤一。ここは新撰組の屯所だ。」


 「私は名前です。」



斎「名前か。」



私が元気ということがわかると安心したのか斎藤さんは少し微笑んだように見えた。


ってか名前名前!
名前呼ばれてる!!!!!


録音したい!動画とりたい!!
なんで私は携帯も持っていないんだ・・。




斎「ところで名前、あんたはどこに住んでいる?」



 「え?」



斎「家まで送る。」



家まで送る!?
そんな青春な!

いやでも。私の夢の中でしょ、これ。
どうやって家にいくんだ・・。



 「あの・・その・・。」



斎「どうした?もしかしてこの辺りの者ではないのか?」



 「まぁ・・そのような・・。」



斎「変わった着物を着ていたが、あれは南蛮のものか?」



 「うーん・・そうなのかな。」



斎「はっきりしないな、あんたは。」



呆れモード!斎藤さんの呆れた感じも見れて幸せ!あ、そんなこと考えてる場合じゃない。完全に不審者になってしまう。




どうしよう。
説明してみようか・・。

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