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薫「あ、俺監督だって。ふーん、これはいろいろ楽しみだな・・。」


隣の席で薫がそれはそれは嬉しそうに微笑んでいた。ぱっと見は可愛い笑顔だけど私には真っ黒に見えるよ、その微笑み。
斎藤君や沖田君、山崎君がキャストだからどう料理してやろうかと考えてるんだろうな。



薫「あれ、名前は?何ひいたんだよ。」


薫がご機嫌スマイルで私に聞いてきたが、対照的に暗い顔をしていたであろう私を見え笑顔が消えた。


 「あ。」


そのまま何も言わずに私のくじをとりあげた。
目をやると自分のくじを私に放り投げる。



 「え?」


ちょうどその時、学級委員の声が響いた。


学「メインのシンデレラ誰ー?」


薫「俺だけど。」


え?え??


薫が不機嫌顔で手をあげた。一瞬教室が静まり返ったがすぐに賑やかになる。

南雲似合いすぎとか薫君なら絶対可愛いとか。
男子と女子のざわめきがそれはそれはもう。


特定の女の子にシンデレラをやってほしくないという乙女心が働いた女子が多かったんだろう、女子の賛同がすごかった。



 「あの、薫?」


薫「何。」


 「なんで・・。」


薫「お前がシンデレラなんてやったら、また斎藤のファンに何か言われるんじゃないの?」


それって私のために交換してくれたってこと?
何それ。
嬉しくなるじゃん・・。


 「薫、ありが・・。」


薫「ま、文化祭まで精々俺のパシリとして活躍してよね。」


私の感謝の言葉は小悪魔スマイルにかき消された。


前言撤回。悪魔だこいつ。



だけど。



こんな悪魔が好きな私はなんなんだろう。








半年ぐらい前まで。
私はある先輩が好きだった。
だけど一ヶ月もしないうちにふられた。
見た目や服装が好みじゃないとか、そんな理由。

悲しくて辛くてすごい泣いたけど。



薫「そんなクズと別れられて良かっただろ。ま、もっと自分磨いて見返してやれば?」


隣の席の薫にそう言われて、千鶴ちゃんにも励まされて。私はやっと立ち直れたのだ。


千鶴ちゃんと違って口は悪いし、意地悪な奴だけど。
でも実は優しいから。
そんなところに惹かれていたのかも。


ま、薫は可愛い妹しか目にないみたいだし。
私は特に何もすることなく今を過ごしていた。

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