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 「なあ、この後はどうするんだよ。」


平助がそう言いながら僕の肩を叩いた。
食事を終えた二人を僕達四人は相変わらず尾行してるんだけど…。
海沿いの道を歩いている二人の後姿はカップルとは言えない距離をあけて歩いていた。


 「僕だって本当は解散の予定だったけどさ。」


 「このままじゃあれで終わるよな。あの二人。」


左之さんが小さくため息をついて少し離れた場所の二人を見つめた。


 「あーもう。じれったいな。仕方ない。こうなったら…。」


 「何をする!?」


僕は一君から携帯をとりあげるとメールを打ち始める。


 「総司?」


 「一君、二人の為だから。」


――名前。誕生日おめでとう。今日はいきなり予定が入ってしまい祝うことができなくてすまなかった。もしよかったら今度二人で会えないだろうか?


 「総司!?」


 「え?何で一君にこんなメール打たせるんだよ?」


 「なるほどなぁ。」


 「はい、送信。」


画面が送信完了を知らせると一君は携帯を奪うようにして取り返し内容を確認していた。
左之さんはわかったみたいだけど二人は理解不能な顔をしている。



 「おい、総司。これは…!」


 「ほら、名前ちゃんが携帯チェックしてる。…うんうん、ご丁寧にきっと土方さんに教えてるだろうね。」


 「総司もしかして一君をライバルだと思わせるために??」


 「左之さんがメールで名前ちゃんは人気があるって伝えてるし。きっと焦るんじゃないかな?二人で会うなとか言いだすかもよ。」


僕達は二人に気付かれないギリギリの位置まで近づいた。
やっぱり二人はメールのことで少し話をしているみたい。



 「…行くなよ。」


 「え?」



小さいけど確かに土方さんがそう言った。
そして次の瞬間、土方さんにすっぽりと抱きしめられて名前ちゃんが見えなくなる。



 「っ!!!」


思わず僕達四人は息を止めていたと思う。
いくら見慣れている土方さんと名前ちゃんとはいえ、美男美女だと絵になるからね。



彼女の耳元に土方さんが何かを呟いた。
するとみるみる顔が赤くなっていくから、ああ、多分告白したんだなって僕達もわかってしまう。


 「…成功だよな?」


左之さんが小さく呟いて笑った。
一君も平助も嬉しそうに頷く。


 「これでやっと…イライラしなくてすむかな。明日も早速からかうネタができたわけだし。」


 「総司、あまり土方さんを困らせるようなことはするな。」


 「でも良かったー!これで土方さんもしばらくは機嫌よく仕事してくれるんじゃねえの?」



僕達が暢気に話している間に二人は少し離れて何か話していた。
カップル誕生の瞬間なんてなかなか見れるもんじゃないし、まあ良かったんだよね。


―――ピピピッ



 「!?!?」


一君の携帯がメールがきたことを告げた。
静かな場所に響き渡って僕達は思わず固まってしまう。


ちらりと土方さんの方を見れば…。





あ、ばれた。





 「…逃げるよ。みんな。」


 「うわっ!土方さん!!」


 「やべ!怒られるぞ!」


 「すみません!土方さん!!!」


 「おーーーーまーーーーえーーーーらーーー!!!!!」





僕達はその場で全力疾走することになる。まぁ土方さんが名前ちゃんを置いて追いかけてくることはないと思ってたけど…二人にしてあげたいと思ってたしね。僕達はその後そのままいつもの居酒屋へ直行することになった。











そして翌日。

 「土方さん、おはようございまーす。」


僕は土方さんのデスクまでわざわざ行って挨拶をした。



 「てめぇ…総司。」


 「やだなぁ。朝から眉間に皺がよってますよ。昨日は楽しかったでしょう?何で怒ってるんですか。」


 「何でだと!?」


 「まぁまぁ。僕達は二人に早く幸せになってほしかっただけなんですし。あんまり怒ってると名前ちゃんがびっくりしちゃいますよ。」


少し離れた席に座っていた名前ちゃんが僕達の方を見るとにこりと微笑む。
恋する女の子は可愛いねぇ。


その笑顔に土方さんも赤くなっちゃってさ。
やだなぁ、中学生じゃないんだから。


 「でも良かったですね。名前ちゃんと付き合うことになって。」


 「…まぁな。」


 「名前ちゃん、人気あるんだから、のんびりしてたらとられてましたよ。」


 「斎藤には気をつけろと言った。」


あ。一君の件誤解したまんまなんだ。
…おもしろいからしばらく放置しておこっと。


 「へ〜。まぁ他にも気をつけるべき人はたくさんいると思いますが…。」


 「あいつはしっかりしてそうでぬけてるからな。強がるくせにいきなり弱くなったりするし…それで寄ってくる男はたくさんいるだろ。」


土方さん…淡々とのろけるのやめてくれません?
誰のおかげでくっついたと思ってるんですか。



喉まで出かかった言葉を飲み込んで僕は笑った。今日ぐらいは穏やかに見守ろうと決めたんだ。…僕って優しいから。


 「まぁ、俺のもんだってわかったらなかなか来る奴もいねえだろうが…。総司、お前も手だすなよ。」


 「はーい。」


 「あいつは良い女だからな…。」


あれ?
なんだか僕の中に違うイライラが生まれそうなんだけど。
もしかしてこれから惚気聞かされることになるの?土方さんの?僕が?



気付いてないのは当人だけ。



人の恋路を応援するものは、惚気地獄で死んじまえ…ってこと?



あーあ。応援して損した。
今から土方さんへの嫌がらせ考えようっと。


ま、でも。
悪い気分じゃないかもね。







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