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――今から会えるかな?もう家?



仕事を定時で切り上げて、用事を済ませてからメールを送信した。


名前ちゃんが仕事を終えてまっすぐ帰宅してたらもう家にいるはずなんだけど。



携帯が小さく震えて画面が光った。



――家だよ。どこで待ち合わせ?



良かった。
どうやら予定は入っていないらしい。



――今から行くから待ってて。



そう打ち込むと彼女の家へと向かって歩き始める。
ここからなら十五分もすれば着くだろう。




――ご飯食べた?何か作ろうか?




――いいの?ありがとう。後十五分ぐらいで着くと思う。




こんなやりとりに頬がゆるむなんて自分でも信じられないよ。


足が自然と速くなる。












予定よりも五分早く着いた。 

インターホンを押す手が止まる。



沖「ふぅ・・。」


なんだろう。

がらにもなく緊張してきた。





――ピンポーン



沖「ただいまー。」



自分の家のように入る。
なるべくいつも通りに。



 「はやっ!まだご飯できてないよー。」



キッチンの方から焦った声が聞こえてきた。


部屋に入り荷物を置くとキッチンに入る。



 「お帰り、総司。」



沖「今日のご飯何??」



 「お魚焼いてるよー。」



名前ちゃんは料理に夢中でこっちを見てくれない。


さて、どうしようかな。









僕は左之さんみたいにきっと甘く、優しくは言えない。

だけどこれが僕だから。









沖「名前ちゃん。」



 「んー?」



やっとこっちを向いてくれた彼女に真剣な顔で伝える。





沖「あのさ。恋人って関係、そろそろやめたいんだよね。」



 「え・・・・?」



名前ちゃんは目を丸くする。
完全に手が止まって、こっちを見てる。

初めてみた、こんな彼女。


珍しいものが見れたせいで思わず少し笑ってしまった。


名前ちゃんの目が少し動いたかと思うとみるみる涙が・・


え?涙?



沖「ちょっ・・ちょっと待って!まだ続きが・・。」



 「ヒック・・そう・・じ、私・・何かした?そんなこと・・・・言う・・っなんて・・。」



初めて泣かせた。
違うよ、僕が見たいのはそんな顔じゃないんだって。
思わずおろおろしてしまい、彼女を抱きしめた。



沖「最後まで聞いて?」


 「うっ・・。」



沖「僕のお嫁さんになってほしいんだよ。」



 「へ?」



相変わらず目はキラキラしてるけど、ぴたりと涙が止まる。



沖「だから、恋人って関係じゃなくて、夫婦になってほしいの。」



そう言ってポケットから小さな箱を取り出した。

会社帰りにダッシュして買いに行った指輪が入った小さな箱を。



 「ふう・・ふ?」



沖「そう。結婚しよう?名前ちゃん。」



 「な・・んで・・。」



沖「え?」



 「なんでそんな紛らわしい言い方するの!総司のアホ!!!」



バシバシと胸に攻撃される。
泣いたところも初めて見たけど、こんなに叩かれるのも初めて。
いつも穏やかな彼女のいろんな一面が見れている気がする。



沖「あはは。ごめんごめん。普通に言うんじゃ僕らしくないでしょ?」



 「だからって・・。」



唇を突き出してむくれている彼女の細い指に光る小さな石がついた指輪をはめた。
まだ涙が残る頬をなでて問いかける。



沖「僕とずっと一緒にいてほしい。いいよね?」



 「・・いいよ。」



そう言って彼女は笑った。
一番綺麗な笑顔だった。



沖「・・・・・名前ちゃん。」




 「総司・・。」







これいい雰囲気ってやつだよね?






なのに。





僕の正常な嗅覚が邪魔をする。






沖「・・・・焦げ臭い。」





 「あぁぁ!お魚が!!!!!」






沖「くくっ・・普通のプロポーズできないの、僕だけのせいじゃない気がするよね?」





 「料理してるときに言うから!!」






慌ててグリルから真っ黒の魚をとりだす彼女を、世界一愛おしいと思ってしまうから。




これからはずっと君に振り回されてあげる。






 「あーあ。感動的なプロポーズになると思ったのに・・・。」




焦げた魚を目の前にしょんぼりする名前ちゃん。




沖「じゃあやりなおす?」



 「え?」



目を丸くした彼女の手をひいてキッチンをでた。

そのまま向かうのはバスルーム。



 「総司??」



沖「お風呂でゆっくり言ってあげる。」



 「えぇ!?////」



沖「その後ベッドでも何回でも言ってあげるよ。名前ちゃんが満足するまで。」




 「ちょっ・・総司!ストップストップ!」




まだまだ夜は長いんだし。


ゆっくり僕の愛を伝えてあげるから。


覚悟してね?









next謝罪とあとがき

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