二人でプレゼント見ながらデートして、ちょっといい店でご飯食べて、その後夜景見ながら告白する。これって最高のプランじゃない?
ほんと、僕達って優しいよね。
「まぁ…土方さんが素直に言ってくれればいいんだけどな。」
「それを言わせるのが僕達の仕事だよ、左之さん。」
左之さんのメールを見た後、なんとかプレゼントを買いに行くことになったらしい二人を僕達はこっそり追いかけていた。
プレゼントを買う買わないでまたもめてたんだよ、あの二人。
ほんと素直になってよ。
名前ちゃんが雑貨屋さんに行くって言ったのが聞こえたけど、今はアクセサリーショップにいる。
店の前を通った彼女がちらりとネックレスを見ていたのを土方さんが気付いたからだ。
そういうところはすごいよね、あの人。
店員さんに薦められていろいろ見ている名前ちゃんは本当に楽しそうだった。
土方さんも眉間の皺がとれて良い感じだし。
「あ。二人の顔が赤くなった。」
「店員にかっこいい彼氏ですねーとか言われたんでしょ、どうせ。」
「総司、あんたは超能力でもあるのか。まさにその通りだ。」
「いや、斎藤。お前は読唇術が使えるのか?俺には店員の口の動きはわからなかったんだが。」
一君の特技がさらりと発揮されたのは置いといて。どうやらプレゼントは買えたらしい。
名前ちゃんが少し俯いてお礼を言っているようだった。
うんうん、今日はいつもより素直じゃない。
買ったネックレスをそのままつけていくようだ。
ほら、土方さん。ここでちゃんと似合ってるとか言わないと。
「…土方さんが何か言いかけているのだが…。」
「何々!?一君の読唇術がないと会話聞こえねえからさ。」
「に…に…にあ…。」
「にゃあ?猫?」
「そんなわけないでしょ、平助。」
「似合っている、と。」
「土方さんあんなに照れなくてもそれぐらい言えるだろうに。」
左之さんが笑いをこらえるのに必死になっていた。声は聞こえなくても二人とも顔が赤いから一君が言っているのは正しいんだろう。
「いい大人があそこまで照れるとか…病気じゃないの。」
「そう言うなって総司。それだけ本気なんだろ。」
「土方さんって仕事できるし、いつでも余裕なイメージだったけど意外とそうでもないんだな。」
「彼女もそういうところに惹かれているのではないか?」
「だろうな。」
その後二人は映画館に入って行った。
僕達はすぐ近くのコーヒーショップに入って時間を潰すことにした。ここなら映画館の入り口が見えるから見失うことないし。
「さて、あとは食事だし。次の作戦は…。」
「食事に作戦など必要なのか?」
「左之さんがケーキ予約してくれてるみたいだし、ちゃんと誕生日おめでとうは言わせないとね。」
「確かに!ケーキがあったら自然と言えるよな!!!」
「だから、間違っても映画終わってケーキとか食べに行かないように…はい、平助。携帯かして。」
「へ?何で俺?」
カフェオレをずずっとストローで吸っていた平助の手にある携帯を取り上げた。
「ああ、ごめん。好きな子にメールでもしてた?」
「みっ見んなよ!総司!!」
「なんだ、ゲームか。相変わらず色気ないよね、平助は。」
僕は平助の携帯で土方さんにメールを打ち出した。みんなが画面を覗き込んでいる。
「ちょっと、総司。敬語使ってくれよ!」
「今更平助が敬語使えなくても土方さんは何も思わないよ。送信っ。」
――土方さん!左之さんが予約した店でケーキも頼んでおいたから!!ちゃんとお祝いしてあげて!あいつ甘いもの好きだし。
よし。これで真っすぐご飯食べに行くでしょ。
僕達はのんびりコーヒーを飲みながら二人を待った。
案の定、二人は映画館から出てくるとそのまま真っすぐお店へ向かうようだ。
どうやら平助からのメールはちゃんと読んでくれてたみたいだね。
けっこう雰囲気の良いお店で土方さん達は夜景が見える席に通された。
僕達はテラス席。外だからこっちからは良く見えるけど多分中からはあまり見えないはず。外が暗いからね。
それにあの二人は周りなんて見えてないだろうし。
僕達もついでに食事をすませてしまおうと適当にいくつか頼んでシェアすることにした。
「いつもよりだいぶ穏やかに会話をしているな。」
一君が二人を見ながら言う。ってか読唇術使えたら会話内容わかっちゃうんだよね。
…一君のいる範囲で迂闊な事は言えないな。
「メイン食べたらケーキがくるんだよな!いいなあ…俺もケーキ食いてぇ…。」
「あ、ケーキきたよ。」
室内の灯りが少し暗くなってケーキが運ばれてきた。多分誕生日のBGMが流れているんだろう。
名前ちゃんが目を丸くしていた。
そしてその後の笑顔で。
ああ、土方さんがちゃんとおめでとうと言えたんだなと僕達四人は確信したってわけ。
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