小間物屋は圧倒的に女子が多い。
斎藤さんはこんなところにくることが滅多にないのだろう。キョロキョロと周りを見て落ち着かない。
綺麗な簪、扇子やうちわ。
化粧品もあるのかな?
「わぁ・・綺麗。」
そう言って一つの簪を手にとった。
この時代って機械もないし、手作りで職人さんの手でできました!って感じ。
現代で買ったら高そう。
斎「それが欲しいのか?」
簪を見つめる私に斎藤さんが聞いてくれた。
「あーでも・・こっちも可愛いな。」
近くにあったもう一つを手に取る。
最初に見たものとは違い可愛らしい印象を受ける簪。
斎「名前にはどれも似合うな。」
「えっ?//」
こ・・この人真顔でそんなこと!
天然なの!?
斎藤さん・・おそるべし。
「まぁでも・・。」
私は簪を元の場所へ置いた。
「屯所じゃつけられませんもんね。」
屯所じゃ千鶴ちゃん同様男装しなくてはならない。簪なんてつける暇ないもんね。
斎「すまない・・窮屈な思いをさせる。」
申し訳なさそうに斎藤さんが目を伏せた。
斎藤さんは何も悪くないのに。
「斎藤さん!」
斎「?」
「私、これが欲しいです!」
そう言って斎藤さんの前にうちわを差し出した。金魚の絵が描かれている涼しげなうちわを。
斎「これが欲しいのか?」
「これから暑くなりますから!いいですか?」
斎「もちろんだ。」
そう言って斎藤さんは私の手からうちわをとると会計をしに奥へ行った。
私が元気をださないと、斎藤さんも元気でないよね!
簪より何より、斎藤さんにもらうってことが嬉しいから。
うちわ、大切にしようっと。
その後しばらく町を散歩してから屯所へ戻った。
部屋に戻り、また手をつないでいいかと聞くと斎藤さんはやっぱり赤くなりながらも手をつないでくれた。
「んー何しましょうね。」
斎「何かしたいことはあるか?」
「あ!!!!」
ラブラブイチャイチャ恋人っぽいこと。
あれをやってみたいです・・。
私は一緒にトリップしてきた荷物をごそごそとあさり、あるものを取り出した。
「これです!」
斎「・・・・それは・・?」
「綿棒!耳掃除しまーす☆」
斎「は?」
「では斎藤さん。ここに寝てください。」
私は正座するとぽんぽんと自分のひざを叩いた。
状況が把握できていない斎藤さんも膝枕を促されていることはわかったらしく、また顔が赤くなる。
斎「//じ・・自分でできる。」
「それをあえてやりたいんじゃないですか♪」
そう言うと私は無理やり斎藤さんをひっぱり膝枕する。
わお、斎藤さんが近い!!!
斎「名前・・///他の者が来たら・・。」
「大丈夫ですよ。みんな仕事してるんですし。」
照れる斎藤さんを無理やり横に向かせ私は耳掃除を開始した。
最初は照れていた斎藤さんも気持ち良くなってきたのか、目をとじて大人しくしている。
(か・・可愛い!まつ毛長い!女装させ・・おっと。)
邪な気持ちを抑えつつ、優しく手を動かした。
静かで穏やかな時間。
毎日浪士と戦って死と隣り合わせとはとても思えないぐらい。
ずっとずっとこんな時が続けばいいのに。
平「名前!名前ー!?」
続かなかった。
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