平「いい天気だなー!」
屋上には誰もいない。
元気な太陽と青空が出迎えてくれた。
平助君は走って購買に行きパンを買ってきたらしい。私は持参したお弁当を持ってきた。
屋上の端っこに二人で座ってご飯を食べ始める。
「平助君、いつもパンだよね。」
平「あー。親忙しいし、昼は買って済ますことがことが多いな。」
「・・今度、お弁当作ってこようか?」
平「いいのか!?」
ぱっと花が咲いたように笑う平助君が愛しい。
ほんとのほんとに嬉しそうなんだもん。
「味は保証できないよ?」
笑いながら言うと平助君は私のお弁当を眺めて言った。
平「いや、それだいぶ期待しちゃうって。めちゃくちゃうまそうじゃん!」
「食べる?」
はいっと卵焼きをさしだすと一瞬平助君が固まった。
平「あ・・///サンキュ。」
照れてるのか伏し目がちになるとそのまま差し出されている卵焼きを食べる。
よく考えたら食べさせてあげてるんだよね。
恥ずかしいかも・・//
平「ん・・うまい!」
「良かった。他のおかずも食べていいからね。」
平「俺が食べちゃったら名字の分なくなっちゃうだろ?」
「じゃあ平助君のパン一口ちょうだい?」
平助君が持っているのはクリームパン。
うちの購買でも一位二位を争う人気パンだ。
平「いいぜ?」
平助君の手からクリームパンを受け取ろうと手を伸ばした。
だけど。
その手は平助君の左手につかまれる。
「え?」
平「ほら、あーん。」
そう言って平助君は右手に持っていたパンを私に差し出した。
「自分で食べられるよ!?」
平「ほら、食べて。」
そう言われ、私は諦めてパンにかぶりついた。
口いっぱいに甘いクリームが広がっておいしい。
「おいし・・。」
平「ははっ、名字クリームついてる。」
「えぇ!?どこ!?」
平「ここ・・。」
唇の端っこを平助君の指がなぞる。
その触れ方がなんとも扇情的で顔に熱が集まって行く。
「あの・・///」
平「名前・・・。」
そのままゆっくりと平助君の顔が近付いてきた。
少しだけ頬が赤い気がするけど、でもいつもと違って大人っぽくて。男の人って感じで。
平助君の左手が私の後頭部を掴むと一気に距離が縮む。
たまらなくなって私は目を閉じた。
「・・・ん・・。」
そっと触れるように唇が重なる。
離れたかと思ったらもう一度。
何度かそれを繰り返され、私はいつ息をしていいのかわからなくなって。
「へ・・へいすけく・・んっ・・。」
呼吸がしたくて目をあけるとばっちりと視線が重なった。
平「・・可愛い。」
今までのヘタレな平助君はどこに行っちゃったんだろう?
私の目の前にいるのは別人だ。
離れようにも頭を手で押さえられていて無理だ。
「ん!?」
ぺろりと唇をなめられる。
平「甘い・・。」
も・・もうこれ以上は・・。
私の心臓が持たないよ!!!!!
「へ・・平助君!ちょっと待って!!」
平「わっ!?」
平助君を突き飛ばす。
はぁはぁと自分の呼吸に恥ずかしくなった。
目を丸くしている彼に思わず言い訳をしてしまう。
「そ・・その・・息ができなくて・・あの・・。」
嫌なわけじゃないのに。
いきなりの展開についていけなくて。
だけどうまく言えなくて。
突き飛ばしたりなんかしたら平助君が傷つくかも知れないのに。
「ご・・ごめ・・嫌なわけじゃないの。」
どうしよう。
嫌われたかな?
あぁ・・泣きそう。
平「ちょ・・名字!?」
あ、名字になっちゃった。
やっぱり・・。
嫌われたの?
目のふちで止まっていた涙が零れおちた。
ひとつ零れたらもう止まらない。
平「泣くなって!ごめん!俺・・。」
ぎゅっと平助君が抱きしめてくれる。
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