そして名前ちゃんの誕生日当日。
彼女には左之さんから待ち合わせ場所をメールしておいた。
そして…。
「なんかこういうのってドキドキするよなー!探偵みたい!!!」
「静かにしろ、平助。気付かれたら終わりだ。」
「とか言って斎藤もノリ気じゃねえか。服装も黒だしよ。」
「こっこれは…。俺はいつもこのような格好だ。」
待ち合わせ場所は駅前の噴水広場。
僕達四人は少し離れたところで待機していた。
土方さんには僕がメールしたんだけどね。
まずは待ち合わせ場所と時間のみのメール。
で、二人が揃ったら…
「俺達が参加できないことを告げ…。」
「今日のデートプランをメールするわけだな。総司?」
「うん。左之さんがいい店予約してくれたし、あとは土方さんが適当にまわってくれるでしょ。」
土方さんだって大人だし、それぐらいできるよね。
まさか二人でそのまま解散とかならないといいんだけど。
しばらく見ていると土方さんが歩いてきた。
キョロキョロと周りを見ていて落ち着かない。
ポケットから煙草を取り出して吸い始めた。
「それにしても…こうして観察してる側はいいけどよ、見られてる方はたまらねえな。」
「うー俺は絶対嫌だね。後から知ったら恥ずかしくて死にそうじゃん。」
左之さんと平助が土方さんを見ながらそう零した。僕も見る側はいいけど見られる側なんて御免だね。
「…名前も来たぞ。」
一君の声にみんなが反応する。
名前ちゃんは仕事の時の服装と違って女の子らしい格好だった。うん、可愛らしいんじじゃないかな。
「おー!きたきたー!よし、総司。土方さんにメールメール!」
「わかってるよ、平助。」
僕は携帯を操作して土方さんにメールを送り付けた。
簡単に言ってしまえば僕達四人が来れないこと、夕方お店を予約してあるから彼女を祝ってほしいということだけだ。
メールを送信してすぐに電源を落とした。
これで土方さんは僕に連絡とれないでしょ?
様子を見ていると土方さんが携帯を取り出して読んでいるのがわかる。
「あぁ!?」
「え?どうしました?土方さん。」
「あいつら…。」
あ、眉間の皺が増えていく。
多分自分がはめられたの気付いたんだね。
思わず笑いそうになるのをこらえていると土方さんが耳に携帯をあてているのが見えた。
ほーらやっぱり。電源切って正解。
さて、夕方までどうやって時間を潰すつもりかな?
「あいつらこれなくなったらしい。」
「は?」
「だから、あいつら来ねえんだよ。…もともと来る気があったのかも怪しいがな。」
どうする?だなんて普通女の子に聞くかな?
そのまま遊びに行けばいいじゃない。
ほんと土方さんは…。
全然名前ちゃんの方見てないしさ。
私服姿が可愛いからって照れないでよ。気持ち悪いなぁ。
誕生日に過ごす相手がいないなら付き合ってやるが?なんて聞き方するから、名前ちゃんが怒っちゃったじゃない。
ああ、でもなんだかんだお願いしますって言っちゃってる彼女は可愛いよね。
「ふー。なんとかうまくいったな。」
「ああ。あとは夕方まで時間を潰して…。」
息をするのも忘れていたのか、平助が深呼吸していた。左之さんもやれやれといった感じでため息をつく。
二人がどこかへ歩き出したのを見て僕達も立ち上がる。
「この後はどうするのだ?解散か?」
「一君、冗談でしょ?まだまだ尾行するよ。ちゃんと見届けないとね。」
「…あまり良い趣味とは言えないぞ。」
「応援してるんだからいいじゃない。」
そう言って僕達は歩きながら二人の後を追った。
「ねえ、左之さん。メールしてほしいんだけど。」
「あ?メール?」
「プレゼント。買うようにさ。」
「おっ!いいねー!!左之さんうまく送ってくれよ〜。」
仕方ねえなと左之さんは携帯を取り出してメールを打ち始めた。
「こんなんでいいか?」
――土方さん、行けなくなってすまなかったな。名前にプレゼントでも買ってやってくれよ?…あいつけっこう人気あるから早く捕まえたほうがいいぜ。
「おおーさすが左之さん!送信送信っ!」
「平助、落ち着け。」
「なんだよ、一君落ち着きすぎー。なんかいいじゃんこういうの!」
はしゃぐ平助と相変わらず冷静な一君に挟まれて左之さんはメールを送信した。
僕達の場所から土方さんが携帯を取り出したのがわかる。
そして読んだ後少し乱暴に携帯をポケットにつっこんだのもね。
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