なんなんだよ、あの男女。
いや、女装している俺が言えることじゃないけれど。
町で遭遇する度に追いかけられ、話しかけられ、逃げるのがやっとだ。
ちっとも千鶴に接触できる気がしない。
しかも話しかけられる内容もどんな食べ物が好きか?嫌いなものは何か?普段は何をしてるのか?矢継ぎ早に飛んでくる。
そろそろあいつの対処法を真剣に考えなくてはいけない。
そう思っていた時にまた出会ってしまった。
「薫ー!!!」
びくりと体が揺れる。
もうあいつの声を聞くと条件反射で体が走り出すようになっていた。・・・が。
「捕まえた!」
捕まった。
今日も女装しているから本気で走ることができない。あいつの全速力に敵うはずもなかった。
仕方なく振り向くと忌々しい浅葱色の羽織が見えた。さらに後ろには沖田達が見える。そして。
薫「千鶴!」
千「薫・・。」
千鶴もいた。
はやくあいつだけ連れて行きたい。
俺達で鬼の国を復興するんだ。
その前に、あいつの苦しむ顔も見たいから。
そうだ。
沖田だけじゃなくて、こいつも・・。
思わず目の前の名前見る。
目が合った。
「やっと見てくれた!!」
笑顔になったかと思えばあっという間に視界が暗くなった。
薫「だ・・抱きつくな!!」
「かーわーいーいー!!」
薫「はなれろ!!!」
土「何してやがる!名前!!!」
背中のほうから怒声があがった。
「あ・・副長。」
沖「あ、土方さん。もう大阪から帰ってきたんですか?」
土方が走るようにくると俺から名前をひきはがした。
土「巡察中だろうが!」
その通りだよ。土方。
今回はお前の言うことを全面的に支持する。
「巡察より薫です。」
薫「力強く言うな!俺がお前の上司なら即切腹させてる!」
土「お前・・。」
「うるさいですよ、土方さん。話の長い男は嫌われますよ。」
土「まだ三文字しか言ってねえだろうが!それに・・こいつ、千鶴狙ってるんだろうが!何仲良くしてやがる!」
沖「いいんじゃない、名前ちゃんがその子相手にしてくれれば千鶴ちゃんも無事だし。」
「ですよねー。さすがです、組長。」
薫「いいわけあるか!人の話聞けよ!こんな時だけ仲良くなるなよ、お前ら完全に俺のこと無視してるだろ!」
土「・・勝手にしろ。」
薫「とめろよ、土方。」
「さ、薫。私のお嫁さんになって!」
薫「ふざけるな!誰がお前みたいな男女!俺は千鶴を・・あれ?千鶴?」
「千鶴は沖田さんと帰ったよ。」
もう嫌だ。
なんなんだこいつ。
こいつと出会ってから。
調子がくるってる。
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