「ん・・。」
どれくらい寝てたのかな?
あれ?体が軽くなった気がする!
山南さんの薬きいたのかも。
起き上がろうと横を向いた時だった。
「わぁ!」
小さな女の子がこっちを向いて座っていた。
多分・・四、五才ぐらい?
「えっと・・。」
八木さんちの子じゃないし。
この子どこの子!?
沖「あ、名前ちゃん、目覚めた?」
「沖田さん?」
気がつくと襖の所に沖田さんが立っていた。
ん・・でもなんかいつもと違うような?
なんか少し驚いた顔してるし。
沖「どうしたの?久しぶりに名字で呼んだね。夢でも見てたの?」
え?私はいつも名字ですけど。
沖「名字、母様はまだ具合が悪いから、父様と遊ぼう?」
名字「はーい!父様!」
えぇ!?沖田さんいつの間に子供がいたんですか!!!!
ってその前に・・母様って言った?
え?私??
何これ、夢?
一人でパニックになっているにも関わらず、二人は縁側でキャーキャー遊んでいる。
女の子はすごく懐いてるし・・まぁ沖田さん子供好きだもんね。
高い高いとかしてもらって楽しそう。
沖田さんも・・父親になったらあんな感じなのかな?
穏やかで、優しそうで、とても人を斬る人にみえない。
沖「名字、何して遊ぶ?」
名字「父様!いつものいつもの!」
沖「わかったよ。」
ん?
いつものって何だ?
二人は庭に出るとせっせと土を掘り始める。
何をするつもり?
「あ・・あの・・。」
私の小さな声は全然届かない。
集中して掘り続ける二人。
まぁ楽しそうだし、いっか。
名字「できたー!父様できたー!!」
沖「うん。よくできたね。」
多分五十センチは掘ってるんじゃないかな。
その上に草や葉を置いて、さらに土をかぶせて・・って。
「落とし穴!?」
沖「上手になったね、これなら平助君あたりは軽くひっかかるよ。もしかしたら一君もひっかかるんじゃないかなぁ?」
名字「楽しみだねー!!」
い・・遺伝子怖い!
いや、遺伝子じゃない!沖田さんの教育間違ってる!!!
青ざめている私をよそに、縁側に戻ってきた二人。
今度は・・お絵かき?
名字「父様!お絵かきしていい?」
沖「いいよ。何を描くのかな?」
よしよし。
そうだよ、女の子らしくお絵かきとかしてて。お願いだから。
やっとほのぼのした風景が見られる〜。
沖「はい、これにお描き。」
名字「はーい!」
沖田さんが紙と筆を用意する。
お、さすがパパ。準備万端ってわけ・・
「ちょ!ちょっと!!!」
沖「ん?どうしたの?名前ちゃん。」
今度は私の声が届いたらしい。
ニコニコと微笑んでいる沖田さんが女の子に差し出してるのは。
―豊玉発句集―
「だだだだめです!それにお絵かきなんて!!!」
沖「大丈夫だよ。あの人も子供のやったことに怒らないでしょ?」
いや!子供のやったことっていうか、あんたがやらせたことだから!!!
沖「父様と母様かいてくれる?」
名字「はーい!!」
悪だ・・あの人悪だよ。
もうどんな子供に育つの!?
女の子なのに沖田さんみたいになっちゃうの!?
まだ四、五歳でこれって恐ろしすぎるよ・・。
沖「名字、お絵かき終わったら出かけようか?」
名字「わーい!父様とお出かけだ!」
沖「どこいく?」
名字「んー・・・お団子屋さん!」
へぇ・・。
小さい子でもやっぱり女の子は甘いものが好きなんだね。
名字「母様に買ってくるの!」
「え・・。」
なんって可愛い子!
私の子ってこんな優しい子になるの!?
・・沖田さんの要素はのぞいて。
沖「よし、じゃあ行こうか。」
名字「お団子屋さんの龍君がね、一緒に遊ぼうって言ってくれたの。」
お。
やるじゃん、龍君とやら。
小さい子の恋って可愛いよね。
すっと沖田さんは立ちあがると名字の手をひいて歩き出す。
沖「はやく帰ってくるね?」
「あ・・いってらっしゃい。」
沖「・・・悪い虫は早めに潰しておかないとね・・。」
ぎゃーーー!!!!
邪悪!
龍君逃げてー!!!!
怖い笑顔の悪魔が今からそっちに行きまーす!!
こんな恐ろしいパパいないよ!
初めて見たよ!
だめだめ、こんなパパだめー!!!
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